アドビシステムズは4月26日、デジタルマーケティングに焦点を当てた年次カンファレンス「Adobe Digital Experience Insights 2018」を都内にて開催した。
本稿では、同カンファレンスで多数行われたユーザー事例講演のなかから、クロックス・ジャパンによるセッション「大胆なモバイル戦略により売上を大幅に拡大させた、クロックス・ジャパンのAnalytics活用」の模様をレポートする。
チームで分担する「4つの役割」
本社を米国コロラド州に置くCrocsは、世界90カ国で軽量の樹脂で出来た靴「クロックス」を販売する企業だ。その販売はオンラインでも行われており、単一のプラットフォーム上で12の言語を駆使し、税制や通貨単位など各国に対応させたサイトを運営している。
登壇したクロックス・ジャパン director e-commerce japanの木村真紀氏は、日本のeコマースとデジタルマーケティングの責任者を務める人物だ。同氏が率いる日本のマーケティング組織は、「Operational Support」「Merchandising」「Onsite Merchandising」「Digital Marketing」の4つのチームで構成され、技術開発やデータ分析専任のチームはない。分析は木村氏も含めた各チームのメンバーが行い、技術的に実装したいことは全てグローバルチームにリクエストを上げて検討されるのだという。
「クロックスは世界各国で販売されていて、UIの変更やカートの最適化など、コンバージョンを上げる方法は大体同じです。(良いアイデアであれば)1人のリクエストが全体に実装されることもあるからこそ、今のコンバージョンが高いサイトが出来上がったのだと思います」(木村氏)
Operational Supportはコールセンターのサポートなどを行い、Merchandisingは日本の公式販売サイトで販売する商品ラインナップを検討する。Onsite Merchandisingは、サイトのプロモーションをプランニング・実行する、言わば店長のような役割を担う。商品が売れやすいシーズン(日本ではGWや夏季など)のどのタイミングで商品を打ち出すかといったことを決めて実行するのはもちろん、サイトのトップページに何を掲載するか、バナーをどこに並べるかといった陳列についても彼らの守備範囲となる。
そしてDigital Marketingは、集客、すなわちサイトのトラフィックを最大化させるための施策を打ち出す”広告担当”にあたる。ユニークなのは、基本的に代理店には頼らず、インハウスで実施している点だ。木村氏が2011年に入社した当時から、同氏のクレジットカードでGoogleに広告を出したり、Facebookに広告を出したりしているという。「人員も少ないのでできる範囲が限られるところはあるが、ナレッジはなかに持っておきたい」という木村氏の意向もあり、こうしたやり方は今も継続されている。
では実際、木村氏らは日々どのようなデータをチェックし、マーケティング戦略に活用しているのだろうか。その1つとしてまず紹介されたのが、Onsite Merchandisingが毎日チェックするという前日の「数字」――具体的には、売上、ユニーク・延べのユーザー数、コンバージョンレート、オーダー、ユニット、客単価、トランザクションあたりの販売点数と靴単価だ。
なかでもコンバージョンレートは、必ず前年の同日と比較してチェックするという。「去年は何のプロモーションもやっていなかったからこの数字で、今年はこれをやったからこうなった、と期待通りの結果が出ているかどうかを必ず去年と対比して見るようにしています」と木村氏は説明する。
また、商品選定を担うMerchandisingでは、プロモーションに合わせて商品をセレクトしているので、Onsite Merchandisingと同様に「期待通りに売れたかどうか」を前年とも比較してチェックする。
例えば、商品Aをトップに掲載してプロモーションを実施すれば、商品Aが売れているはずだ。しかし、予想に反して商品Bのほうが売れているのであれば、すぐに入れ替えたりするケースもあるという。