先日、Ubuntuの長期サポート版の最新バージョンとなる「Ubuntu 18.04 LTS」が公開された。Ubuntu 18.04 LTSは2023年までサポートが予定されている。長期に渡って同じバージョンを使い続けたい管理者にとってはうってつけのバージョンだ。今回はUbuntu 18.04 LTSの主な変更点を説明するとともに、Ubuntu 16.04 LTSとの注意すべき変更点などをまとめておこうと思う。
本連載では主にサーバを運用している管理者を想定しているので、その視点からするとそれほど大きな変更は感じないのではないかと思う。新規採用やデフォルトバージョンの変更あたりでまとめると次のようになるだろう。
- Linux 4.15ベースカーネルを採用(cgroup v2インタフェース対応CPUコントローラ、AMDセキュアメモリ暗号化機能サポート、エンハンスソフトウェアRAID機能付きMDドライバ、SATAリンクパワー管理のための改善された電源管理機能、Linuxセキュリティモジュールスタック機能サポート、POWERホストおよびNVカーネルのサイン機能サポート、Linuxカーネル4.16からIBM/Intelハードウェアサポートをバックポートほか)
- アドレス空間配置ランダム化機能を公的に利用するためにPIE (Position Independent Executable)を有効にしたコンパイルをデフォルト化
- OpenJDK 10をデフォルトJRE/JDKとして採用(2018年9月にOpenJDK 11がリリースされたあとはOpenJDK 11をデフォルトJRE/JDKに変更。OpenJDK 8は2021年4月までを提供)。
- Python 3.6をデフォルトインストール。Python 2系はパッケージ経由ではサポートされるものの、デフォルトではインストールされない
- PHP 7.2.xの導入
- QEMU 2.11.1の導入
- libvirt 4.0の導入
- DPDK 17.11.xの導入
- Open vSwitch 2.9の導入
- Nginx 1.14.0の導入
- Apache 2.4.29の導入
あとはUbuntu 16.04 LTSからの変更点に的を絞るとすれば、次のあたりに注意しておくべきかと思う。
- mount.cifs経由でのマウントで使われるSMBプロトコルバージョンを2.1およびこれ以上のバージョンに変更。SMB1を使う場合には明示的にvers=1.0を指定する必要がある
- デフォルトのDNSリゾルバをsystemd-resolvedに変更。ifupdownが非推奨となりnetplan.ioへと変更。netplan.ioの設定ファイルは/etc/netplan/ディレクトリ以下に配置
- ifupdownがインストールされなくなったため、ifupおよびifdownも利用不可能。同様の処理はipコマンドを使って実施することができる(ip link set $device upやip link set $device downなど)。ただし、ifupdownはパッケージからインストールすることができるため、利用したい場合にはパッケージからインストールを実施する
- gpgコマンドをgnupg2へ変更
- インストール時にスワップパーティションを作成せずにスワップファイルを利用する設定をデフォルト化
- インストーラでホームディレクトリの暗号化オプションの提供を廃止。かわりに、ディスクをまるごと暗号化する機能を推奨
- OpenSSHにおいて1024ビットよりも小さいRSA鉤の使用を禁止
- システムコンテナマネージャLXD 3.0導入(LXDサーバクラスタリング機能、NVIDIAランタイムパススルー機能、カスタムストレージボリュームのリモート転送機能、コンテナ内部における/dev/lxd APIが提供する機能の拡張、ポートリダイレクトのサポート、コマンドラインツールの改善など)
SMB1でのアクセスが必要になるファイルサーバを使っているのであればマウント部分には変更が必要になるだろう。後は直接DNSを設定しているならそのあたりの設定を変更する必要があり、また、ifupdownを使い続けたいならパッケージからインストールしておく必要がある。気をつけておく必要があるのはまずこのあたりだ。
Ubuntu 16.04 LTSからのアップグレード
Ubuntuサーバを運用しているのであれば、Ubuntu 16.04 LTSかUbuntu 14.04 LTSを使っているのではないだろうか。Ubuntu 14.04 LTSを使っているのであれば、Ubuntu 18.04 LTSへのアップグレードを検討する時期だ。Ubuntu 16.04 LTSを使っているなら、アップグレードするかどうかは状況による。このままUbuntu 16.04 LTSを後2年使い続けたほうがよいかもしれないし、このタイミングでUbuntu 18.04 LTSにアップグレードしたほうがよいかもしれない。どちらがよいか一概には言えないが、問題がないなら無理にアップグレードしなくてもよいのではないかと筆者は思う。
Ubuntu 16.04 LTSを使っていてUbuntu 18.04 LTSにアップグレードしたい場合は、7月末以降まで待ったほうがよい。現時点でUbuntu 16.04 LTSからUbuntu 18.04 LTSへアップグレードしようとしても、次のように「アップデート候補は存在しない」というメッセージが出力されるだけだ。
強制的にアップグレードする方法もあるが、LTSの用途から考えてそれを実施する利点はあまり見い出せない。
Ubuntu 16.04 LTSに対するアップグレードは、Ubuntu 18.04.1 LTSが公開されてから数日後に提供が開始されると見られている。Ubuntu 18.04.1 LTSの公開は2018年7月末ごろが予定されているので、少なくとも7月末以降までは待つ必要がある。
1つ気になるのは、WSLのUbuntu 16.04 LTSがどういった扱いになっていくのかだ。Microsoft Storeに登録されているバージョンがUbuntu 18.04 LTSに変更され、Microsoft Store経由でアップグレードが提供されるのか、それともアップグレードはユーザーの操作に委ねられるのか、それともUbuntu 16.04 LTSのまま後3年間は提供が継続するのか……。現状でありそうな今後の動きを整理すると、次のようになるだろう。
- Microsoft StoreにUbuntu 18.04 LTSが、Ubuntu (Ubuntu 16.04 LTS)とは別に新たに追加される
- Microsoft StoreのUbuntuが18.04 LTSにアップグレードされ、Microsoft Store経由でアップグレードが提供される
- Microsoft StoreのUbuntuが18.04 LTSにアップグレードされ、Microsoft Store経由でアップグレードは提供されない。アップグレードしたい場合にはすでにインストールしてある場合には一旦削除してインストールするか、コマンドで操作してアップグレードする必要がある
- Microsoft StoreのUbuntuは18.04 LTSにはアップグレードされない。Ubuntu 18.04 LTSにアップグレードしたい場合にはユーザがコマンドを操作する必要がある
いつ動きが出てくるかは難しいところだが、状況を考えると春のWindows 10アップデート提供のタイミング、または、7月末以降のタイミングで何らかの動きがあるか、またはそれらタイミングで何も起こらないのであれば、Microsoft StoreのUbuntuはあと2年間はUbuntu 16.04 LTSのままいくのかもしれない。
WSLはまだ出てきたばかりの機能だ。今のところサーバ的な使い方が主だが、今後はリモートデスクトップ機能を使ってXアプリを使うといった用途も出てくるように思う。いろいろ考えるとしばらくはより新しいバージョンを使ったほうがよいように思うので、できればアップグレードを実施したいところだ。その方法などについては、アップグレードの提供が始まったら改めて取り上げよう。