シスコシステムズでは4月11日、働き方改革をテーマに掲げたカンファレンス「Cisco Collaboration Summit 2018」を都内にて開催した。本稿では、最新のコラボレーションソリューションを導入した代々木アニメーション学院、およびリクルートテクノロジーズによる事例講演の模様をレポートする。
教育水準の維持・向上に向けた「課題」とは?
最初に登壇したのは、代々木アニメーション学院 代表取締役社長 兼 学院長の橋本 大輝氏だ。1978年に開校した同学院は今年創立40周年を迎え、全国で8校舎を展開する。生徒数は約3,000人、これまでの卒業生は12万人以上にも及ぶという。
同社は、「職業専門学校として生徒が育っていった”後”の世界を把握していないと、良い教育はできない」(橋本氏)という観点から、教育事業を中心に、エンタメ事業、施設運営事業の3つの事業を運営している。
アニメーションとエンタテインメントに特化して、エンタメ学部、アニメ・ゲーム学部、クリエーター学部の3つの学部を擁している学院だが、全国展開を進めた数年間の間に生徒数は3倍近くに増加した。
「全国で生徒が急増するなかで、生徒がどこにいても同じ水準の教育を提供することが課題になっていました」と橋本氏は語る。
アニメ産業では需要が増加しているが、技術は多様化し、人手不足が深刻だ。ここに社会問題も作用しており、例えばアニメ業界で働きたくても、親の介護や家業を継がなければならないといった事情で東京に出てこられないケースも増えているという。全国で生徒が倍増したのはこうした背景があるからだろう。
一方、これに対応する講師のスキルにもバラつきがある。だが、技術だけでなく表現についても教えねばならないため、標準化することが難しいのだ。また授業内容が各教室で重複することがあったり、生徒側も同じ教室の同じメンバーだけで授業をしているとマンネリ化を招きやすかったりという課題があった。
「表現者を育てているので、生徒も”見られてなんぼ”です。1つの教室のなかで10人、20で切磋琢磨するよりも、8校舎3,000人で切磋琢磨したほうがよりたくさんの人に見てもらえ、刺激になるでしょう。また、オーディションの類は東京に集中しているので、福岡校や札幌校から受けるとなると、時間もコストもかかってしまいます」(橋本氏)
利便性の向上だけでなく、機会ロスの削減も
代々木アニメーション学院では、全国のキャンパスで同じレベルの授業を提供することを目指し、今年4月よりCiscoのビデオ会議システム「Cisco TelePresence」を全8校舎に導入した。これにより、どこの校舎からでも、8校舎の講師の授業が全て受講可能になった。
「例えば、東京にいる声優の講師の講義を福岡や札幌でリアルタイムで受けることができるなど、全校のライバルたちとつながるようになりました。つい先週に行われたばかりの入学式でも、早速活用しました」と橋本氏は説明する。
授業ごとに配信担当講師を選定し、空いた講師は添削・習熟度アップに専念することで、品質向上に時間をかけられるようになった。また、生徒のマンネリ化についても、全校の生徒と随時競争・講評が可能となったことで解消されたという。
「講師のスキルアップにもつながっています。オーディションや審査会への遠隔参加も今月から立て続けに実施する予定です。交通費や移動時間の削減だけでなく、チャンスが増え、機会ロスの削減も期待できます」(橋本氏)
代々木アニメーション学院ではこうした取り組みによって、アニメ産業の需要増加に対し、より早く質の高い人材を業界に送り込める体制を整えている。
「授業が楽に回るようになりましたし、生徒たちが喜んでいる姿を毎日目の当たりにできるようになったので(導入して)本当によかったです」と橋本氏は笑顔を見せた。