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[2ページ目]  “Internet of Wine”の挑戦

日本ワインが転機を迎えている。

固有品種とも言える甲州が国際マーケットで高く評価されていることに加えて、これまで未整備だったワイン法も制定(2018年10月施行)。国内でのワイン消費量も順調に増加しており、全国各地に次々と新しいワイナリーが誕生している。

そうしたなかで次の一手として注目を集めているのがAIやIoTの活用だ。ワインのクオリティを決めるのは原料となるぶどうの品質。これを高めるための切り札として”スマート農業”に期待が寄せられている。

3月19日、都内にてエスクリが主催するワインセミナー「ディカバリー大分~いいやん大分!うまいもん大集合~」が開催され、デジタル技術を活用した日本ワインの現状と展望が語られた。

日本ワイン業界の現状

まず、日本におけるワイン産業の現状について確認しておこう。

セミナーに登壇した農林水産省顧問 西郷正道氏によると、日本ではアルコール全体の消費量は減少傾向にあるものの、ワインの消費はむしろ増加しているとのこと。海外への日本ワインの輸出も増えており、特に日本の固有品種・甲州ぶどうを原料としたワインはエレガントでバランスが良く高い評価を受けているという。

農林水産省顧問 西郷正道氏

少し注意が必要なのは「日本ワイン」の定義だ。簡単に言うと、”国産のぶどうを原料として国内で製造されている”ことが「日本ワイン」を名乗るための条件となる。

当たり前のようにも思える定義だが、実は日本で流通している国産ワインの多くは、原料となるぶどう果汁を海外から輸入している。ぶどうは海外のものでも、醸造するのは国内だからということで「国産ワイン」を名乗っているのだ。

そういったワインにもニーズはあるが、少なくとも「日本ワイン」として国際マーケットに売り出すワインとは明確に区別しなければならない。

そこで制定されたのが、「国産のぶどうを原料として国内で製造されているワインを日本ワインと呼ぶ」というルールである。銘醸地として知られる山梨県や長野県では以前から独自の呼称制度を取り入れていたが、国としてしっかりと日本ワインを定義づけした意義は大きい。

一方で日本ワインにはまだまだ課題がある。それはワイン用のぶどうの生産が需要に追いついていないこと。日本では古くからぶどうが作られてきたが、それは生食用でワイン原料には向いていない。高品質なワインを作るためには”ワインに適したぶどう”を生産する必要があるのだ。

しかし、もともとぶどうは生産コストが高く、それに見合う単価で販売するために、どうしても農家は生食用の生産に流れていってしまう。結果、生産量が伸び悩み、欧米に比べて生産ノウハウが溜まりにくいのである。

こうした状況を脱却するためには、「データに基づいた生産技術を確立し、今までにない省力的な生産を実現していく必要がある」というのが西郷氏の考えである。

そこで注目されているのが、ロボット技術やICTを取り入れたスマート農業だ。例えばGPSを活用した自動走行する農業機械で超省力・大規模生産を実現、あるいはセンシング技術やデータ活用により作物の品質を最大限に高めるといった取り組みである。

もちろん、いきなりこうしたやり方を農家が導入するのはハードルが高い。そこで農水省が提案するのが、農機メーカーやICTベンダー、官公庁らが一つになって農業者を支援する農業データ連携基盤の構築である。

民間企業や官公庁が気象や土壌といったデータを提供し、これを農業者が活用することでワイン原料用ぶどうの生産効率と品質を高めていくのが狙いだ。いわばIoTならぬ”IoW(Internet of Wine)”である。本格的なサービスは2019年4月から提供していくという。

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