Adobe Systems(以下、Adobe)が、人工知能(AI)による製品の差別化に注力している。マシンラーニングを統合したAIフレームワーク「Adobe Sensei(以下、Sensei)」は、標準機能の「インテリジェント・サービス」として同社の製品で活用できるようになっており、すでにクリエイティブの分野では、その存在感を増している(関連記事:『Adobe MAX 2017で判った、高まるAdobe Senseiの存在感とAIの役割とは?』)。
では、顧客インサイトを理解する分析の分野で、Senseiはどのような役割を担うのか。分析技術が進化するなか、顧客は分析ツールに何を期待するのか。2018年3月に米ネバダ州ラスベガスにて開催された年次カンファレンス「Adobe Summit 2018」の会場で、Adobe Analytics Cloudグループ製品マネジャーを務めるベン・ゲインズ(Ben Gaines)氏に話を聞いた。
企業が「データ」に抱く期待
――モバイルデバイスやスマートスピーカーなどの台頭で、顧客との接点(タッチポイント)は増加しています。企業はデジタル・マーケティングの分析ツールに、どのような期待を寄せているのでしょうか。
ゲインズ氏:「Adobe Analytics Cloud(以下、Analytics)」は2つの視点にフォーカスしています。1つは(Analytics)導入企業のブランド力向上。もう1つは、顧客に対するエンゲージメントを強化する際に、必要となるデータを「使える形」で提供することです。
ご指摘のとおり、現在は顧客とのタッチポイントが複数存在します。われわれはそれら全てにおいて、優れた体験を(導入企業が自社の顧客に対して)提供できるようにしています。
価値のある顧客体験を提供し、企業のブランドイメージを向上させるには、あらゆるデータを分析することが不可欠です。私見ですが、約10年前から、企業は(さまざまなチャネルから収集される)データが、顧客体験向上の根源であると認識し始めたと考えています。
――企業のデータ活用に対するスタンスが変化してきたということでしょうか。
ゲインズ氏:現在は企業のさまざまな部門が、顧客の嗜好性や行動パターンなど、顧客体験の向上につながるデータを必要としています。リアルタイムで適切なコンテンツを提供するためには、迅速な意思決定が必要です。全ての部門が「優れた顧客体験を提供する」ことに責任を持っています。こうした潮流は、企業に大きな変化をもたらしていると言えるでしょう。
2017年、われわれはプライベートDMP(データ管理プラットフォーム)である「Adobe Audience Manager」と、Analyticsとの連携強化を図りました(関連記事:『「Adobe Analytics」に新機能 - 「Adobe Audience Manager」と連携強化』)。これにより、例えば、「顧客セグメントによるカスタマージャーニーの違い」など、顧客体験に対する深い洞察が得られるようになりました。実際、われわれのAnalyticsは、マーケティング部門だけでなく、コンタクトセンターやコンテンツオーナーにも活用されています。