米Adobe Systems(以下、Adobe)は3月28日、「Adobe Sensei(以下、Sensei)」を、NVIDIAのGPU(Graphics Processing Unit)に最適化すると発表した。3月25日から開催している同社の年次カンファレンス「Adobe Summit 2018」で明らかにした。
Senseiとは、Adobeの人工知能(AI)および機械学習のフレームワーク。NVIDIA GPUに対応したことで、パフォーマンスが大幅に向上する。今回の提携で「Adobe Creative Cloud」と「Adobe Experience Cloud」の利用者は、Senseiをエンジンとする新サービスの開発期間の短縮や、パフォーマンスの向上が期待できる。
同社は3月27日、パートナーエコシステムの拡大も発表しており、現在5,000社以上の代理店、システムインテグレーター、テクノロジーパートナーを有することを明らかにしている。Adobeは「われわれは、Sensei API(Application Programming Interface)を幅広く利用できるようにしている。今回の提携により、パートナー企業が(パフォーマンスに優れたSenseiを利用することで)顧客体験駆動型ビジネスの加速を支援できる」と説明する。
AdobeとNVIDIAは、10年以上にわたる協力関係を構築している。GPUの処理速度を生かし、クラウドベースのAIや機械学習を利用する製品/サービスのパフォーマンス向上に取り組んでいる。具体的には、オリジナルのイラストからキャラクターを製作できるキャラクターアニメーション制作ツール「Adobe Character Animator CC」の自動リップシンクや、「Photoshop CC」の顔認識機能、「Adobe Stock」の画像分析、エンタープライズコンテンツ管理ソリューション「Adobe Experience Manager」の自動タグ付けなどだ。
Adobe×NVIDIAで何ができるのか?
Adobe Summit 2018の基調講演には、米NVIDIAでCEOを務めるジェン・スン・ファン(Jen-Hsun Huang)氏がスペシャルゲストとして登壇。個人的にも四半世紀以上の友人であるという米Adobe社長兼CEO シャンタヌ・ナラヤン(Shantanu Narayen)氏がホストとなり、両社の強固なパートナーシップをアピールした。
「Adobe Summit 2018」の基調講演では、米Adobe社長兼CEO シャンタヌ・ナラヤン氏(写真左)と、スペシャルゲストとして登壇した米NVIDIA CEO ジェン・スン・ファン氏(写真右)が、対話形式で「Adobe×NVIDIAで可能になること」を訴求した |
基調講演でファン氏は、「急速に変化するビデオゲーム市場のなかで生き残るには、コンピュータグラフィック(のバーチャル)だけでなく、フィジカル(の世界)をシミュレーションするAIの分野にも注力していくことが不可欠だ。すでにAIはコンピューティングのモデルになっており、(いずれコンピューティングの)中核を担うようになるだろう」とコメントした。
NVIDAは3月26日、レイトレーシングをリアルタイムで実現する技術を搭載したGPU「Quadro GV100」を発表している。レイトレーシングとは3次元グラフィックス(3DCG)の描画手法の1つであり、実写のような映像のレンダリングを可能にする。これによりコンテンツ制作者は、高画質の映像をリアルタイムで確認しながらコンテンツを開発することが可能になる。
こうしたコンテンツ開発の一部は「Adobe Character Animator CC」で行われており、Senseiを活用したキャラクターの解析も可能になる。基調講演のデモでは、ゲームに登場するキャラクターをSenseiが解析し、性別や年齢、表情を判別する様子が披露された。
なお、両社は将来の利用者増加に対応するため、クラウド側と利用者側に近いエッジで、NVIDIAのハードウェアを活用したSensei AIサービスの最適化にも取り組む予定であるとのことだ。