2018年2月26日から3月1日まで、スペイン・バルセロナで開催されたモバイル業界最大の展示会「Mobile World Congress 2018」では、サムスン電子がGalaxyシリーズの最新モデル「Galaxy S9/S9+」を発表した。
世界市場でサムスンはGalaxyシリーズの法人展開を加速している。また、スマホをPCのように利用する「Samsung DeX」にも新機能が追加された。現地バルセロナでの取材をもとに、最新Galaxyの見どころをレポートする。
「Samsung Knox」を中心に法人展開を加速
日本ではあまり知られていないものの、サムスンはグローバル向けの発表会において法人向け機能も紹介している。その中核にあるのがセキュリティプラットフォームの「Samsung Knox」(ノックス)だ。
Knoxは、Android OSを個人用と仕事用のモードに分離する機能に加え、ハードウェアレベルのシステム保護、MDMとの連携にも対応している。Android 8.0 Oreo搭載機では「Android Enterprise」との統合を実現、Galaxy S9世代では最新バージョンのKnox 3.1を搭載する。
また、米国では法人向けモデル「Galaxy S9 Enterprise Edition」を発表した。毎月のセキュリティ更新を最大3年間提供し、発売から2年間は端末の販売を継続するなど、法人向けPCに匹敵するライフサイクルを保証。ペン入力に対応した「Galaxy Note8」に続き、Galaxyの法人利用の動きを加速させている。
コンパクトな「DeX Pad」登場、VDI用途も有望
スマホを外部ディスプレイに出力し、キーボードやマウスを駆使してPCのようにアプリを使える「Samsung DeX」機能も、Galaxy S9世代でアップデートされた。
DeX用の新たなドッキングステーション製品としては、「DeX Pad」を発表した。基本機能は初代モデル「DeX Station」を踏襲しつつ、横置きにしたことで形状はコンパクトになり、重量は約135gと100g近く軽くなっている。グローバルでの価格も109.99ドルと手頃になった。
DeX Padは、Galaxy本体を接続するUSB Type-Cコネクターに加え、HDMIやUSBなど拡張用のポートを搭載する。小型化に伴い、有線LANは省略されている。だが冷却ファンはしっかり搭載しており、Galaxy S9が搭載する最新CPUの性能を最大限に引き出すことが可能だ。
DeX Padで注目したい新機能として、Galaxy本体の画面をタッチパッドやソフトウエアキーボードとして使えるようになった。BluetoothやUSBのキーボードやマウスがない環境でも、簡単な入力操作だけならDeXを十分に利用できそうだ。
画面出力はマルチ解像度に対応した。これまではフルHD(1920×1080ドット)のみだったが、新たにHD+(1600×900ドット)とWQHD(2560×1440ドット)にも対応し、より幅広い仕様の外部ディスプレイを利用できる。
DeXに最適化されたAndroidアプリの対応も拡大している。ただ、法人利用ならば、大画面でリモートのWindows環境を利用できるVDIクライアントとしての用途が有望かもしれない。サムスンによればCitrix Receiver、VMware Horizon Client、Amazon WorkSpacesに対応するという。
DeXでスマホによるPC置き換えは本格化するか
サムスンは将来的なPC市場の縮小を予想しており、同時にスマホを大画面で利用したいとの需要が高まると見ている。PCを持たない、あるいは起動するのが面倒と感じるホームユーザーや、PCを持たずにスマホからVDIを利用するビジネスユーザーが増えることは間違いなさそうだ。
こうしたトレンドをいち早く察知し、スマホによるPCの置き換えをDeXによって促進していくのは、世界のスマホ市場でトップシェアを誇るサムスンならではの戦略といえる。