若年層のセキュリティ意識の向上と優秀なセキュリティ人材の発掘・育成を目的に、毎年8月に開催される「セキュリティ・キャンプ 全国大会」と、その地方版として全国各地で展開される「セキュリティ・ミニキャンプ」。2017年度の開催では、成長したかつてのキャンプ修了生に講師を依頼するなど、新たな取り組みも実施された。

1年間の活動を終えた今、運営側の視点から見た2017年度はどんな年だったのか。

2004年にスタートし、14年目を迎えたセキュリティ・キャンプの意義と役割、そして今後の展望について、セキュリティ・キャンプ実施協議会の国分裕氏と長谷川陽介氏、佳山こうせつ氏にお話を伺った。

(写真左から)セキュリティ・キャンプ実施協議会の国分裕氏、佳山こうせつ氏、長谷川陽介氏

図式化で明確になった「キャンプの意義」

――2017年度は、新たな試みとして過去のキャンプ参加者に講師を依頼されたそうですね。

長谷川:(説明慣れしていて)確実に講師をできそうな人にお願いしたことは過去にも多少あったのですが、講師経験が全くなくて「うまくできるかどうかわからないけど……」という方にもお声がけしたのは今回が初めてでした。

佳山:「セキュリティ・キャンプで育った人が次の世代を育てる」という”人のサイクル”を作っていきたかったんです。仕組みづくりとか、現地との関係づくりは大人がやるけれど、中身は参加する若者たちにやりたいことをやっていってほしいなと。「もし失敗しても、我々大人が助けにいくよ」というスタンスでいました。

――そうした取り組みを始めた2017年は、セキュリティ・キャンプにとっても大きなターニングポイントとなる年だったと思います。何かきっかけがあったのでしょうか。

長谷川:佳山さんが(セキュリティ・キャンプ実施協議会に)入られたことが大きかったと思いますよ。2015年くらいまではセキュリティ・キャンプの意義付けすることに精一杯で、地方で開催されるミニキャンプの講師にも「行ける人が行く」というような状況でした。

佳山さんが加わったことで、「セキュリティ・キャンプで何をやるべきなのか」が整理されたんです。そこから積極的に若者を講師に迎えたり、地方産業と結び付けていったりという取り組みにつながっていきました。

佳山:国分さんや長谷川さんがずっとやってこられたことを図式化しただけなんです。図式化すると、「そういうことか」と共有しやすくなって、意見も出るようになりました。とにかくセキュリティ、というのではなく、クルマのためのセキュリティとか、スタートアップにとって最低限必要なセキュリティは何かとか、何かテーマに沿ってやりたかったんですが、(図式化したことで)ミニキャンプの開催地域にも説明しやすくなりましたね。

今までは、とにかくセキュリティ・キャンプというものを広げよう、数をこなしていこうというフェーズでしたが、2017年からは「何のためにやっているのか」を明確にすることで、ミニキャンプを地域で開催する意義も伝えやすくなりました。

――もともとのミニキャンプの位置付けはどんなものだったんですか?

国分:最初は全国大会の認知度を高めることを目的にスタートしました。特に学生向けというわけではなく、一般の人を募ったセキュリティ・キャラバンを行っていたのですが、もう少し学生に寄ったものをという流れからミニキャンプが生まれました。そこに参加すれば、全国大会にも参加しやすくなりますよね、と。

佳山:登竜門みたいなものですね。そうやって育った人たちが、それぞれの地域の活性化のために活躍できるようにしよう、というのが、2017年度からチャレンジしていることです。修了生が講師もできるとなれば、彼らが影響を与えられる範囲が広がります。セキュリティ・キャンプを離れた後も、草の根的なコミュニティを広げて情報発信していってくれることを期待しています。

長谷川:今までのように講師が教えるだけでは人材も一定の数ずつしか増えませんが、教えられる人が増えることで、どんどん増やしていけるんじゃないかなと思いますね。

――これからミニキャンプはどのように進化していくのでしょうか。

佳山:人材の「地産地消」が、今後のミニキャンプの重要なテーマの1つです。地域密着の視点で人材が育まれる場づくりをすることで、人が人にセキュリティをつなげていく自発的な活動にしていきたいと思っています。

国分:今は元参加者に地元で講師をやってもらうところまでですが、ゆくゆくは地元で活躍してくれる人材を輩出するところまでいきたいなと思っています。例えば、沖縄はちょっとそういう道筋が見え始めているかもしれません。全国大会に参加した後、チューターとして沖縄に凱旋した子がいるんです。

佳山:地元の学校の先生が盛り上げて、ニュートラルな取り組みにしてくださるのはありがたいですね。サポーターがいると、育った子が地域に恩返ししやすくなると思うんです。今後もミニキャンプは、「地域の土壌づくり」と「若者のチャレンジを見守る大人」という2つのテーマでやっていきたいと思っています。