すかいらーくとスタディストは2月5日、すかいらーくが展開するファミリーレストラン「ガスト」全1,367店舗(2018年1月31日時点)に、スタディストのマニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」を導入したと発表した。すかいらーくでは今後、「バーミヤン」「ジョナサン」「夢庵」「ステーキガスト」などグループ全ブランド合計約3,000店舗にTeachme Bizを導入し、約10万人の従業員のトレーニング体制を確立するとしている。
発表会には、すかいらーく 常務執行役員 金谷実氏とスタディスト 取締役 COO 庄司啓太郎氏が登壇し、IT化による店舗業務の効率化と働き方改革の推進、および両社の今後の取り組みなどについて方針が語られた。
すかいらーくの人材事情 - 鍵を握るのは「教育」
「11年にわたるファンドの支配のなかでは、先行投資や短期でのリターンにつながらない投資はやりづらい面がありました。今後は、店舗と従業員に投資していこうという方針です」
こう語るのは、すかいらーく 常務執行役員 金谷実氏だ。すかいらーくは2006年、事業の再構築を目的にMBO(Management Buyout)で非上場化した後、2011年より米国の投資会社ベインキャピタルの傘下にて改革を進め、2014年10月に東京証券取引所1部市場に再上場した経緯を持つ。昨年11月、筆頭株主であるベインキャピタルが保有する全株式を売却することが発表され、新たな一歩を踏み出した。
店舗と従業員への投資として、200店舗規模で店舗の修繕や食器、ユニフォームのリニューアルなどを検討するほか、教育研修へも力を入れる。「昨年1年間で97店舗出店したが、100店規模の新規出店を今後も続けていきたい。先行投資という意味では海外への進出も視野に入れている」(金谷氏)と意欲的だ。
すかいらーく 常務執行役員 金谷実氏 |
また、IT投資にも積極的な姿勢を見せており、今年下半期には店舗の基幹システムを7年ぶりに刷新するという。POSや釣銭機のリニューアルはもちろん、ハンディターミナル専用機のAndroid端末への変更、キッチンディスプレイの導入など、店舗の生産性向上に向けて動き出した。
だが、こうした改革の全てが効率化や人手不足解消を目的としているわけではない。
「昨年、セルフレジの導入を発表したら、『採用難に苦しむ飲食業が人手不足の折……』という文脈で語られることが多かったのですが、我々は採用難は感じていません。セルフレジも、レジが渋滞することによるお客様のストレスを解消するために入れたものなので、全店舗での展開などは全く考えていません」(金谷氏)
店舗クルー(パート・アルバイト)の応募数は2016年は前年比115%、2017年は前年比120%と増加傾向を見せており、採用数も増えている。だが、問題なのは離職率だ。毎年応募者数は増加しており、2016年、17年は約5万人採用したものの、ほぼ同数が退職しているという。
金谷氏は、その原因の1つとして現場のオペレーションの難しさを挙げる。
「我々は、頻繁に季節メニューの導入やグランドメニューの改定を行っています。クルーが辞める理由の1つになっているのは、(その変更の度に変わる)オペレーションが覚えられないからです。ブランド別に見ていくと、オペレーションが簡単な『しゃぶ葉』はほかに比べて10%以上定着率が高いですし、一番複雑な『藍屋』は定着率が低い。きちんとトレーニングができれば、定着率は上がると考えています」(金谷氏)
また、昨年の外国人在籍数は前年比128%と増加しており、今後も毎年2~3割増える想定だ。「外国人クルーは深夜や年末年始でも時給が良ければ進んでシフトに入ってくれるので、安定した店舗運営につながるのですが、教育に頭を悩ませるマネジャーも少なくありません。教育の問題が解決すれば、もっと採用が進むと思います」と金谷氏は語る。