2017年7月27日に「RPA Summit 2017」が開催され、BPM(Buisiness Process Management)やプロセスアナリストの重要性が語られるなど、RPAツールを適用する対象業務の特定が重要視されており、さらには働き方変革といったキーワードと結び付けて語られることが多くなってきています。

2017年3月16日にリクルートテクノロジーズが「A3RT」と呼ばれるAIのAPIの無料公開を発表しました 。デジタルビジネスを実現する要素として近年注目を浴びているAIを、APIを通じて即座に使える環境が整いつつあります。

そんな中、RPAツールを実際に使ってみたいが、どうやって選べばいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は、第一回にて紹介したRPAツール(下表No5)の特徴を中心に紹介します。

表1 : ソフトウェア開発自動化の4領域とRPA(第一回の再掲)

No 領域名 想定ユーザ 対象フェーズ PC操作自動実行 利用技術例
1 ソースコード 開発者 開発(設計・実装) Eclipse、TERASOLUNA ViSC
2 テスト自動化 単体テスト JUnit、Jasmine、JsTestDriver
機能テスト Selenium、SilkTest、Selenide
パフォーマンステスト Apache JMeter
3 ビルド・デプロイ自動化(DevOps、 CI/CD) 開発環境 Jenkins、Gradle、Maven、Capistrano、Fabric
ステージング環境
本番環境
4 基盤自動化(Infrastructure as Code) 環境構築・環境変更 構築 : SDN、Chef、Puppet
テスト : ServerSpec
概念 : Immutable Infrastructure
仮想化 : Docker
5 RPA 開発者/非開発者 - (開発業務ではなく、ビジネスの現場向け) Blueprism、Openspan、BizRobo!、UiPath、Sikuli、WinActor、WorkFusion、Automation Anyware

無償で始める場合

大半のツールは有償で数十万~百万円単位でコストがかかってきます。少し試してみたい場合やPoC(Proof of Concept)をしてみたい場合など、無償で使いたいケースでは、以下の2つのツールがオススメです。

  • WorkFusion RPA Express
  • UiPath Community Edition(トレーニング目的などに限る)

例えば、WorkFusionを利用するには、登録画面にて名前・メールアドレス・社名などを入力し登録すると、登録完了のメールが届きます。筆者は2017/5/13に登録しましたが、「2017/6/15までにダウンロードリンク」が届くとのことでした。2017/6/10にアカウントのアクティベーションのためのメールが届き、アクティベーション完了後同日にインストーラのダウンロードリンクが届きました。

図1 : 登録画面

インストーラはウィザード形式ですので、簡易にインストール可能です。

WorkfusionのRPA Recorder画面は以下の通りです。前回紹介したWinActorと比較すると、フロー図というよりはツリー形式で表示されています。

図2 : WorkfusionのRPA Recorder画面

画面を簡単に紹介すると次のようになります。

  • 画面左上 : Action Library(マウスやキー操作などのアクションのリスト)
  • 画面左下 : Recorder Variables(変数)
  • 画面中央 : Action Flow(繰り返しや分岐などのフロー)
  • 画面右側 : Enter keystrokes(変数として定義した値を入力)

パネル形式の画面レイアウト(Perspective形式)ですので、開発ツールのEclipse等に馴染みが深い方は、よりイメージがつきやすいでしょう。

なお、環境面での注意点は以下の通りです。

  • Workfusionには64ビットのWindowsが必要、メモリは8GB以上推奨※1
  • 仮想環境での利用上の制約
    • UiPath Community Editionについては、固有のDevice IDが必要
    • Mac上のVirtualBoxのWindowsはDevice IDが重複する場合があり

※1 試しにメモリサイズを小さくして試しましたが、メモリは4GBだと動作が不安定でしたが、6GBで動作しました。

スモールスタートか大規模か

前回紹介したWinActorなど、クライアントPCにて操作を記録・保存し、クライアントPCにて実行するタイプをクライアント型(もしくはデスクトップ型)と呼びます。一方で、サーバにログインして、操作を記録・保存し、サーバにて実行するタイプをサーバ型と呼びます。

クライアント型とサーバ型を比べると、ExcelやWebブラウザといった扱えるアプリケーションには大きな違いがなく、管理面に違いが表れます(図3・表2)。

図3 : RPA利用フローにおけるツールのカバー領域の違い

表2:クライアント型とサーバ型の比較

項目 クライアント型 サーバ型
操作の記録
(デザイナのインストール場所)
クライアント サーバ
操作の実行 クライアント 原則サーバ
(クライアントへのアクセスも可)
操作の管理
(ロボットの管理)
分散管理(クライアント)
集中管理する場合は別途構築要
集中管理(サーバ)
コスト スモールスタートに向く 大規模に向く
対応アプリ
(Excel/Web/Outlook/OCRなど)
対応 対応

クライアント型の方が各クライアントPCそれぞれで管理できるため、スモールスタートで始めるにはコストも低い傾向にあります。一方で、大規模で導入するためには、SubversionやGitのような開発の現場で使われている構成管理ツールと組み合わせての利用を検討する必要があります。

ツールの適用対象業務の選定/改革

上図における「(1)業務の選定/改革」はツールそのものの機能には含まれませんが、RPAの適用効果を左右する重要な点です。

Amazonなどのネット通販では、売れ筋商品に注力して売るのとは逆のロングテールの発想で、多種多様な品揃えを武器に、売り上げを伸ばしています。実店舗の場合は売り場面積の広さに限りがあるため、売れ筋商品に注力する必要性がありましたが、ネット通販であれば、店舗に当たるWebサイトの売り場面積は実質無制限になります。

システム化の領域においては、ROIが見込めるいわば売れ筋業務はほぼ、システム化が完了し、デジタルなどの戦略領域にシフトしつつあります。RPAはシステムの導入は極めて簡易であり、かつプログラムの知識がほぼ必要ないため、適用すべき領域としてこれまでシステム化がROIの観点から困難であったロングテールの領域が注目されてきています。

一方でRPA化にあたり、手作業で実施していた作業を、そのままシステムに当てはめてしまうと、対象業務数は膨大になりかねません。RPAの効果を最大化するためには、対象業務を選定しビジネスプロセスを改革するBPRと、そのためのプロセスアナリストの重要性が高まってきています。

図4 : RPA対象業務のイメージ

*  *  *

RPAツールはクライアント型とサーバ型に分かれ、無償のツールも登場してきました。これまでのシステム化範囲とは異なり、ロングテール業務の注目とともに、プロセスアナリストが注目されてきました。

2017年9月6日にRPAテクノロジーズが「BizRobo Smart Connect」サービスを発表しました。これまでRPAが苦手としていた、大量データの読み込みや、AIやSNSとの連携を実現できます。単なる記録・実行に加えてAI等の活用が見込まれるRPA2.0の動きにも今後目が離せません。

著者紹介


正野 勇嗣 (SHONO Yuji ) - NTTデータ シニアスペシャリスト

2011年頃まで開発自動化技術のR&Dに従事。その後、開発プロジェクト支援やトラブルシューティング等に主戦場を移す。「ソースコード自動生成」に加えて、JenkinsやMaven等の「ビルド自動化」、JsTestDriverやSelenium等の「テスト自動化」を扱うようになり、多様化する開発自動化技術動向に興味。

最近は第四の自動化であるInfrastructure as Code等の「基盤自動化」の魅力に惹かれている。開発自動化技術に関する雑誌・記事執筆も行う。2児のパパ。