ウイングアーク1stは11月14日、年次イベント「ウイングアークフォーラム 2017」を都内にて開催した。「会社、働く人をデータの力でエンパワーする」と銘打たれた同イベントでは、「ウイングアークトラック」「事例トラック」「働き方トラック」「AI/IoTトラック」「WAF Techトラック」の5つのトラックが用意され、有識者らによる最新テクノロジーの解説やデータ活用事例の紹介などが繰り広げられた。

本稿では、「働き方」トラックに登壇した日本マイクロソフト テクノロジーセンター センター長 澤円氏が、同社の働き方改革ビフォー・アフターを交えながら語った講演「『働き方改革』を本気で進めるために必要なこと、教えます。~ワークスタイルのリアル~」の模様をお届けする。

旧態依然とした日本企業の「働き方」

かつて、「コンピュータ」と言えば巨大な機器であり、持ち歩くことなどとても考えられない大きさのものだった。だが、そのコンピュータで提供されていた機能は、今や手のひらサイズのデバイスに収まっている。スマートフォンだ。端末が進化し、クラウドという仕組みも定着した今、これをビジネスに活用しないという判断はもはやありえないだろう。

「朝起きて、TV以外で一番最初に見る”何かを映す機械”はPCではなく、スマホという時代になっています」と澤氏は語る。

その際、ほとんどの人はスマホ内に保存したデータではなく、インターネット上にある何かしらのコンテンツを閲覧する。このように、ライフスタイルにはモバイルクラウドファーストが浸透しているが、なぜかワークスタイルにはそれほど取り入れられていない。澤氏によれば、「そうした傾向が特に強いのが日本」だという。日本の労働生産性が、先進7カ国中、19年間連続最下位という不名誉な記録を更新し続けているのも、その辺りが理由の1つになっているのかもしれない。

日本マイクロソフト テクノロジーセンター センター長 澤円氏

ここで澤氏は、同氏の下にやってきたビジネスインターンのエピソードを披露した。澤氏は通常、朝はあまり早くなく、仕事を日中に集中させて、夜も早く帰宅する方針だ。歴史ある交通系日本企業からやってきたインターンは、その仕事のペースと密度の濃さに驚いていたという。一方同氏は、インターンと一緒に行動するなかで「会議で何かが決まるのを初めて見ました」と言われて衝撃を受けた。

それでは会議で何をするのかと尋ねたところ、「会議は一番偉い人が喋る内容をメモするもので、発言した記憶がない」という答えが返ってきた。質問すると「会議の進行を乱した」と怒られるのだという。わからないことがあれば、まず自分に一番近い席にいる先輩に尋ね、それでもわからなければその先輩がさらに隣に尋ね……を繰り返し、最終的に極めて抽象度の高い答えが返ってくる。「これをエコシステムと言います」と澤氏は会場の笑いを誘う。

「日本では、多くの企業が会議で発言しないことに対してペナルティを課していません。これが海外の企業ならば、『あなたはこの会議に出なくても大丈夫ですね』と次から呼ばれなくなります。しかし、日本では黙って聞いていることを参加形態として許しているのです」(澤氏)

ほかにも、日本ならではの光景は見られる。「働き方改革」の名の下に、ノー残業デーやプレミアムフライデーなど、残業時間の削減が叫ばれている。売上目標を無視して良いのであれば、残業を無くすことはできるだろう。だが実際問題、そんなことは許されない。残業するなと言われたら定時で退社はするものの、今度は会社の近くのカフェなどで仕事をするようになり、社屋周辺に社員たちの生息域が出来上がることになる。

また、ある外資系のマネジャーは、日本企業に役員待遇で転職したところ、社員たちがあらゆる報告を会議の場でやりたがるために、常に社内会議に出席しているような状態になり、重要な判断をするために考える時間が取れなくなってしまったのだという。これでは、いかに優秀な人でも十分なパフォーマンスを発揮することは難しい。

「『役員にお伝えするのに、メールで報告なんて失礼だから』という発想から生まれたこの状態は、『礼儀正しく時間を奪う』行為」だと澤氏は指摘した。