今や、広報やマーケティングの一環として、ソーシャルメディアサービス(SNS)を利用する企業も少なくありません。しかし、企業でSNSを運用するメリットとは何でしょうか?もしかしたら、「他社もやっているからなんとかなく」という企業が多いかもしれません。
本連載では、企業アカウントを運営/検討する方を対象に、日本IBMの安原美理さんが、企業アカウント運営における心構えや目的などを、事例を交えてご紹介します。
第1回となる今回は、日本IBMがソーシャルメディアやオウンドメディアを運営する目的や、企業が求められている「コミュニケーション」について解説いただきます。
使命は「IBMのファンを増やす」こと!
私は日本IBMのソーシャルメディアやオウンドメディアを通じてIBMのファンになってもらうための仕事をしています。
私が所属する、Digital Content Marketing & Servicesは2016年8月に発足した比較的新しい組織で、IBMが展開するデジタルコンテンツをインハウスで制作する部署です。時には制作だけではなく、コンテンツ設計から、ディストリビューションに関するコンサルテーションも行います。
そのため、IBM社員でありながら、お客様はIBM、という社内エージェンシーのような立ち位置となります。
このようにインハウスで制作を行うことによって、100%外部の制作会社に委託するよりも、より早く、正確に依頼主の意図を汲み取ってかたちにすることが可能になります。
さらに当然のことながら、従来外部にお支払いをしていた制作費などのマーケティングコストを社内で循環させるため、組織の全体的なコスト削減にもつながっています。
IBMがソーシャルメディア専属チームを持つ理由
私はDigital Contentの中でもソーシャルメディアに特化した仕事をしています。具体的には、FacebookとTwitter、YouTubeの公式アカウントの管理・運用とソーシャル広告に関するコンサルテーションや制作等を行なっています。
このように企業にソーシャルメディア専属チームがあることは珍しく、多くの企業において公式ソーシャルアカウントの中の人は、他の仕事との兼業で、リソース不足や運用ノウハウの属人化に悩んでいるという話をよく聞きます。
一方で、今や企業の情報発信において、ソーシャルメディアは欠かせない要素であり、個別化したマーケティングをするための強力なツールです。
ただ、それを戦略的に活用するためには、良質なコンテンツを適切なタイミングで最適なプラットフォームでオーディエンスに届ける必要があります。さらに、オーディエンスの反応を見て改善するというサイクルを継続的に回すためには、やはりSNS専属チームの必然性が見えてくると思います。
いま、企業に求められている「コミュニケーション」とは?
昨年「フェイクニュース問題」が大きな話題になりました。それを機に、企業の情報発信に限らず、デジタル上の情報の信頼性を重視する社会的機運が高まったと思います。ソーシャルメディアの登場により、誰もが簡単に情報発信ができる現代において、情報の価値は「量」から「質」へとシフトしています。 IBMでもグローバル規模でソーシャルアカウントの統廃合を行い、より効率的に質の高い情報提供やオーディエンスとの双方向のコミュニケーションに力を入れるようになりました。
特に、Facebook、Twitterなどの主要なプラットフォーマーが、個人の投稿、もしくは人々にシェアされる投稿を優先して表示するようにアルゴリズム変更を行ってからというもの、企業の公式ソーシャルアカウントが「生き残る」には大きく2通りのやり方があると思います。
1つは予算とターゲットオーディエンスを設定してソーシャル広告を実施する、もう1つは、思わず誰かに話したくなるようなネタを発信し続ける。コンテンツやプラットフォームの特性、ターゲット、予算によって、その2通りのやり方を使い分けるというのが企業のコミュニケーションでは重要になってくるのではないでしょうか。
インターネット上で誰でも容易にクラウドを使ってサービスの購買を完結できる今、ソーシャルメディア担当者はお客様に一番近い存在。いわば、デジタル上のお客様担当ではないでしょうか。
お客様の反応をインサイトに変えてブランド担当にフィードバックする、そんな理想的なかたちを試行錯誤する日々は続きます。
第2回目は、BtoBイメージの強い同社が、なぜオウンドメディア「THINK Watson」を始めたのか?運用の秘密を深く掘り下げていきます。
著者紹介
安原美理 (YASUHARA Miri) - 日本アイ・ビー・エム株式会社
デジタルコンテンツ・マーケティング - SNS担当
日本IBM 公式ソーシャルアカウントの中の人。AIを使いこなすためのニュースメディア「THINK Watson」の編集部として最先端の事例やキーパーソンのインタビュー、「やってみた」レポートなどを通じて、旬のテクノロジー情報を発信中。
■IBMオウンドメディア : THINK Watson