ワークスタイル変革に取り組む企業にとって最大の課題は、「残業時間の削減」であろう。10月31日~11月2日にかけて開催された「Gartner Symposium/ITxpo 2017」では、ガートナー ジャパン リサーチ部門 バイスプレジデント 志賀嘉津士氏が「ワークスタイル変革にCIOとIT部門はいかに取り組むべきか」と題した講演に登壇。作業内容に応じて就労時間を分割して捉え、それぞれにどのようなITを適用すれば効率化できるかが示された。
変革のテーマは「知識労働者の生産性向上」
志賀氏は、ワークスタイル変革に関する米国のこれまでの歩みを振り返り、「2003年ごろの米国は今の日本と似ている」と指摘した。米国で「テレワーク」などのワークスタイル変革が進んだ背景には、1990年代から知識産業資本主義への構造転換が進んだこと、2000年代から始まったベビーブーマー世代の引退を機に、労働者全体を支援するべきという政策の大きな流れの変化があったという。
ガートナー ジャパン リサーチ部門 バイスプレジデント 志賀嘉津士氏 |
米国の取り組みから得られる示唆は、知識労働者の生産性向上がワークスタイル変革の主眼である点だろう。頭脳を酷使する労働では、長時間勤務はパフォーマンスを下げてしまう。志賀氏は、知識労働者の生産性向上にはやはりITによる支援が不可欠だとし、「短期的課題は時間を作ること、中長期的な課題は意思決定の質を改善することが必要になります」と説明する。
さらに、先行事例から、本質的な目的を理解して浸透させる「目的の設定」、「人事部門とIT部門の協働」、新しい評価制度など制度変更を成功に導くための「チェンジマネジメントの運用」などが変革の成功に不可欠な要素であることを示した。