デジタル変革を成し遂げるため、企業は、必要なプロセス、スキル、組織体制をどう整備していけばよいのだろうか。本稿では、10月31日~11月2日にかけて開催された「Gartner Symposium/ITxpo 2017」で登壇したガートナー ジャパン リサーチ マネージング バイスプレジデント 堀内秀明氏の講演「デジタル・ビジネスに成功をもたらすデータ/アナリティクスの組織とリーダーシップ」から、特にビジネス課題の理解に悩む企業に向けての提言に絞った解説を行う。
データ活用の成果を得るための「3つのステップ」
日本企業がこれまでに導入してきたBI(Business Intelligence)には、「日々の業務運営上、不可欠」「広く一般に利用されることを想定」「信頼性や拡張性が高い」という特徴がある。これはIT部門がビジネス部門の依頼内容を聞き、必要なデータやレポートを提供するやり方で実現してきたためだ。
ガートナー ジャパン リサーチ マネージング バイスプレジデント 堀内秀明氏 |
けれども、「当初の要件から外れたデータを活用しにくい」「要件の追加・変更には追加開発が必要になる」という悩みから、ビジネス部門はデータを個別に入手し、Excelで加工せざるを得ないことが多々ある。
こうした課題の解決策として、堀内氏は「フォーカスを『提供』から『変化の実現』にシフトしましょう」と提言する。これは、ビジネス部門が必要とするデータやレポートの提供を否定するものではなく、提供した後のビジネスの変化に貢献しようというものだ。
では、どうやってシフトを実現するのか。堀内氏はその進め方を3段階に分けて次のように解説した。
ステップ1:依頼の背景にあるビジネス課題を理解する
ユーザー部門からデータやレポートの依頼があったら、該当するデータの有無を回答する前に「なぜ必要なのか」「誰のために行うのか」「期待するビジネス成果は何か」の3つを質問してほしいと堀内氏。
例えば、「セールスの状況が芳しくないので、もっと高い収益性が期待できる顧客リストを作り、部長が会議で使いたい。リード獲得で年内には売上が見込めることが望ましい」という答えを得ることができるだろう。いちいち聞くのか、という反論もあるかもしれないが、次のステップ2に関係するので、「そうした反論があった際は、なぜその質問に対する回答が必要かを説明してほしい」(堀内氏)という。
ステップ2:依頼を「知りたいこと」と「利用可能なデータ」に分解する
必要なデータや知りたいことがわかれば、社内システムを熟知しているIT部門は、利用可能なデータを明確にできる。また、依頼されたものよりもっと良いデータの存在に気付くこともあるだろう。さらに、ユーザーが使う場面を想像すれば、誰がどんな分析を必要としているかがわかり、より本質的な対策の機会を提示できる。
例えば、「先週末のデータが欲しい」と言われた場合、月締めで集計していればまだ今月のデータは存在しない。だが、週締めで集計できるように新しいプロセスを作ろうという話になるかもしれない。堀内氏は、タイトなスケジュールのなかでおろそかにされてきたコミュニケーションの重要性を強調した。
ステップ3:分析結果の活用状況を見守る
現時点で可能な範囲で最善のデータとレポートを渡すことができたとしよう。だが、データを実際に使うのはその先だ。意思決定に変化が生じたかどうかと、実際に行動を起こすことは別の話である。
「効果的な施策がわかったら、その施策を実際にやることになったのかどうかを見守る必要があります」(堀内氏)
さらに、本来のビジネス課題はさらにその先にあり、ステップ1の例のように、売上の増大やリードの獲得が当初の期待通りになったかどうかを確認する必要があるという。変化が起きなかったとしても、起きなかった理由を調べると、ボトルネックの存在がわかるかもしれない。「データと向き合うことはIT部門のなかだけでもできます。プロセスは大変でも、少し(やり方を)変えてみることを提案したい」と堀内氏は強調した。