レッドハットは10月20日、国内最大級のOSSイベント「RED HAT FORUM TOKYO 2017」を開催した。
特別講演にはNTTデータ 技術革新統括本部 システム技術本部 本部長 冨安 寛氏が登壇。「攻めのITを実現するNTTデータの生産技術革新」と題する講演で、NTTデータのデジタルトランスフォーメーションの取り組みを紹介した。
クラウド活用はわずか3%、だが急激に成長中
冨安氏はまず、最近のIT業界のトレンドについて「AIやIoT、Fin-techといったデジタル方面でのテクノロジーがかなり面白いことになってきている」と切り出した。
冨安氏の”IT業界歴”はインターネットがまだ商用利用されていない1990年からだという。
NTTデータ 技術革新統括本部 システム技術本部 本部長 冨安 寛氏 |
「1990年ごろ、人工知能の領域では、ファジー、ニューラルネット、エキスパートシステムといった取り組みが行われていて非常にわくわくしていました。当時はコンピュータパワーが足りなくてうまくいかなったのですが、その頃のわくわく感が再び訪れていると感じます」(冨安氏)
その一方で、既存システムは大きな課題を抱えることにもなった。いわゆるトラディショナルなシステムが複数できあがってしまって、そのことが今のデジタルトランスフォーメーションに対する状況を難しくしているという。
冨安氏によるとNTTデータはトラディショナルな会社だが、「デジタル時代にあってトラディショナルなままではいられない」という危機感があるという。
「現状はトラディショナルなシステムが9割ですが、2020年にはデジタルが6割、トラディショナルが4割になると見込んでいます。技術開発や人材育成などをトランスフォーメーションしていこうと取り組んでいます」(同氏)
現在、NTTデータのシステム開発案件は年2000件ほどのプロジェクトがあるが、クラウドを利用したシステムはそのうちの3%にすぎず、残りの97%はオンプレミス環境だという。
ただ、金融分野ではクラウドサービスの注文金額が2015年から2016年にかけて7倍になったり、開発案件におけるAWS利用数がCAGRで160%で増加したりするなど、クラウドへのシフトは急速に進んでいる。
「トラディショナルとデジタルをどう考えていくか。両者は異なる特性を持っていることもあり、デジタルの激しい変化に既存のIT資産では追従できません。そこでNTTデータでは、トラディショナルはさらなるコスト削減とスピードアップで開発生産性を向上させること、既存のレガシーなIT資産はデジタルと融合させていくこと、そのうえでデジタル領域における新規ビジネス創出に振り向けること、この3つを推進することにしました」(同氏)
NTTデータが定義する3つのストリーム
トラディショナルにおける開発生産性の向上は「Stream I」、既存ITとデジタルとの融合は「Stream II」、デジタルにおける新規ビジネス創出は「Stream III」と名付けられ、これら3つのストリームが同時進行することで、デジタルトランスフォーメーションに対応している状況だ。
NTTデータは、Stream Iでは「TERASOLUNA(テラソルナ)」という開発手法や開発フレームワークで構成するトータルソリューションを、Stream IIではアジャイル開発やDevOpsに対応したクラウド開発環境「Altemista(アルテミスタ)」を提供している。
「最終的にはお客様の環境がこうした3つのストリームが混在する環境になっていくと考えています。例えば金融システムでは、バックエンド系システムはトラディショナル、フロント系システムはデジタルの特徴を持っています。3つが混ざりあった状態です。今後は、これらをオープンAPIで連携させていくことになります」(同氏)