この10数年間、事業ポートフォリオの大幅な入れ替えを行い、デジタル変革を加速するGE。本稿では、10月31日~11月2日にかけて開催された「Gartner Symposium/ITxpo 2017」では、初日のゲスト基調講演にGEジャパン 代表取締役社長兼CEO GEコーポレート・オフィサー(本社役員)熊谷昭彦氏が登壇した。本稿では、同氏の講演「Transforming to a Digital Industrial Company - 次世代製造業に向けたGEの挑戦」から、GEが歩んできた変革への道のり、そして今後の展望をお届けしよう。
デジタルへの投資で変貌したGE
GEと言えば、従来はコングロマリットと呼ばれ、さまざまな事業を展開してきたことで知られる。しかし、2007年のプラスチック事業の売却や、2015年のキャピタル事業の売却のように、一時代を築いた事業を売却して得た資金を、仏アルストムをはじめとするインフラ事業に投じ、インダストリアルカンパニーへの脱皮を遂げた。現在のGEは、「エネルギー」「運輸・輸送」「医療」の3つの分野のインフラを主体とする8つの事業を展開している。
さらに一歩先に行くため、5年前にGEがたどり着いた答えはデジタルへの投資であった。ポイントは2つ。1つは、事業集約により、ハードウェアを主体とするテクノロジーカンパニーになること、もう1つがソフトウェアとアナリティクスへの投資拡大である。GEのハードウェアをより効率的に使ってもらうには、ハードウェアにソフトウェアを載せたソリューションを提供することと、データを活用するアナリティクスの能力強化が不可欠である。熊谷氏は、「GEが目指すのは、新しい時代に合ったデジタルインダストリーカンパニー」だと解説した。
GEジャパン 代表取締役社長兼CEO GEコーポレート・オフィサー(本社役員)熊谷昭彦氏 |
その布石になったのが、2011年11月に約10億ドルを投資し、シリコンバレーのサンラモンに開設したグローバルソフトウェアセンターである。今では約1,200名のソフトウェアエンジニアが同センターで働いており、「従来のR&Dセンターと比べると、働いている人の服装や年齢層も全く違う」と熊谷氏。同センターのソフトウェアエンジニア達が最初に作ったのが、GE全事業共通の「Predix」と呼ばれるプラットフォームである。
これまではそれぞれの事業でソフトウェアを作り、プラットフォームもバラバラであったのが、共通のプラットフォームを開発し、その上で稼働するアプリケーションを開発するやり方に変わったわけだ。熊谷氏によれば、「GEが作っているため、メーカーに適したプラットフォームであることが特徴」だという。
もともとは社内用に開発されたPredixであったが、使えば使うほど使いやすさが向上し、2015年からは「Predix Cloud」として顧客向けにも提供することになった。また、GE自身がサービスを提供するために使っているということ、産業用のクラウドプラットフォームであるということが、顧客がPredix Cloud導入に踏み切る際の説得材料にもなっているようだ。