10月26日に開催された「Dell EMC FORUM Tokyo 2017」における事例講演には、新日鉄住金ソリューションズ(以下、NSSOL) ITインフラソリューション事業本部 事業企画推進部の部長、早瀬 久雄氏が登壇した。

「”クラウドじゃない”と言われ続けて10年、その軌跡と成長戦略とは?」と銘打った講演では、OpenStackベースでのPrivate Cloud as a ServiceのPoC(Proof of Concept)事例を踏まえて、OpenStackベースのサービスの特徴やメリットが紹介された。

「クラウド以上」で10周年

現在NSSOLが特に注力しているのが、企業の基幹システムを支えるITインフラサービスである。

「IT人員のノンコア業務を我々が肩代わりし、ユーザー企業には競争力の源泉となるコア業務に集中できるよう支援している」と早瀬氏は語った。

新日鉄住金ソリューションズ ITインフラソリューション事業本部 事業企画推進部の部長、早瀬 久雄氏

サービスの中核となるのは、2007年に提供を開始したビジネスクラウド基盤「absonne(アブソンヌ)」である。

「企業向けクラウドサービスで既に10周年を迎えるというのは国内ではかなり早い方だと自負している。ただしITインフラオン運用を請け負うことを目的にスタートしたサービスであり、目指すものはクラウドではなくお客さまのパートナーであることだ。そのためよく『おたくはクラウドじゃないね』と言われてきたが、『それでいい』し、『それでこそ』だと考えている」(早瀬氏)

早瀬氏の言う「absonne」が通常のクラウドと大きく異なる点とは、「利用者の自己責任にする気はない」姿勢とそれがサービス内容に反映されていることだという。

「個別対応やカスタマーサービスにも積極的に応じているし、ときには顧客企業の要件を”丸受け”することもある」と早瀬氏。

そんな「absonne」のコンセプトは、既存システムをできるだけ変更せずに受け入れ、またノンコア業務を受け入れながら、既存システムと同じ可用性を担保することにある。

「これはまったくクラウド的ではないと言えるだろう」と早瀬氏は言う。

当初はサービスプロバイダでの採用が多かったが、やがて大企業のERPをはじめとした基幹系システムをクラウド上で運用するようになり、そこから今度は統合インフラを稼働させるようになっていった。そして現在ではハイブリッド基盤としての活用が増えているという。

事業としても2010年より年平均で35%の成長率を維持し続けており、成長に合わせてシステム規模も拡大してきた。現在稼働しているサーバー台数は仮想サーバー5000台/物理サーバー2000台でストレージの総容量は5.5PBに達する。同社ではこれらをすべてDell EMC製品に統一しているのである。

「当初は2つのメーカーのサーバーを使っていたが、障害発生率がDell EMCが極めて低かったため、統一することとなった」(早瀬氏)