クラウド型人事・財務管理アプリケーションを提供する米Workdayは現在、約1,800社の顧客を抱え、公開されているだけでもAmazon、Airbnb、Netflix、日本では日産自動車、日立製作所といった大手企業が名を連ねる。

Workdayを導入するきっかけは何だったのか? どんなメリットが得られたのか? ――Workdayが10月、米国シカゴで開催したユーザーカンファレンス「Workday Rising 2017」にて、世界で約5,100のホテルを運営するInterContinental Hotels Group(以下、IHG)、世界に7万2,000人の従業員を抱えるリスクマネジメント・再保険業のAonの2社の担当者に話を聞いた。

人事システムの統一で進むデータ活用

IHGは現在、「Workdayヒューマンキャピタルマネジメント(HCM)」を人事業務に導入して3年半になる。Workday導入以前、「InterContinental」「Holiday Inn」など10以上のブランドの下、100近くの国でホテルを展開する同社では、10の人事システムが動いていたという。

「総従業員数が何人なのか調べるにはそれぞれのシステムで調べる必要があり、2週間かかっていました」と同社のグローバルHRサービス担当バイスプレジデント レオン・ケニー氏は苦笑まじりに振り返る。

グローバルHRサービス担当バイスプレジデント レオン・ケニー氏。IHGに勤務32年だという

人事システムがバラバラで古かっただけではない。給与計算システムも30種類あり、グローバルで標準化する必要性を感じていた。そこで2013年、提案依頼書を募り、その結果、人事システムにWorkday HCMを選択した。また、既に多数の従業員を抱える米国と英国の拠点で使っていたことと、Workday HCMとの統合が可能であるという2つの理由から、給与計算システムにはADP製品を選んだ。

Workday HCMで管理するのは、IHGの従業員、ホテルレベルではゼネラルマネジャークラスのスタッフだ。米国と英国ではホテルの一般従業員も対象とする。数にして2万4,000人ほどで、パフォーマンス管理やタレント管理、報酬管理などを行なっている。ADPとの統合により、シングルサインオンでADPで管理されている給与情報もWorkday HCMで閲覧できるようにしているという。

システムの運用は、2014年6月に開始された。グローバルで人事システムを統一することで、世界中の従業員に対して同じプロセスで雇用・昇進などの手続きが可能となったほか、かつては2週間を要していた従業員数調査も「30秒で計算できる」とケニー氏。クラウド上に全てのデータがあるので、約1週間かかっていた人事関連レポートの作成は数分程度にまで短縮され、採用申請の手続きにも1日かかっていたのが約3分に短縮された。

また、セルフサービス化も推進し、HR関連の手続きの85%以上が従業員自身の手で行えるようになった。ユーザーの満足度は、95%と高い数字を記録している。

現在はWorkdayのアナリティクス機能の活用も進めており、各国拠点の人事関連データを解析しているほか、従業員調査と組み合わせて離職率を予測したり、離職の理由などを分析したりしている。ケニー氏は「今は営業やマーケティング関連の分析には別のオンプレミスソリューションを利用していますが、将来的には統合することを検討しています」と計画を語った。