「業務効率化」「働き方改革」について、大企業だけの問題だと思っている方も多いのではないだろうか。もちろん、小規模の企業でも取り組める施策はある。業務管理の一元化はその例のひとつだ。
業務管理はすべてFileMakerへ統合
神奈川県横浜市にある「ワイドアルミ」は、窓工事や外構工事を請け負う地域密着型の工務店だ。社員数10名強と少人数だが、代表取締役社長である巾竜介氏を筆頭にエネルギッシュな社員が多く、社内の明るい雰囲気を保ちながら3年間で売上を3倍増にした実績がある。
そんな同社では、業務のほとんどにFileMakerプラットフォームとiPadを利用しているという。FileMakerとは、ビジネスに適したカスタムアプリケーション(カスタムApp)を作成できる開発・実行環境ツールである。
同社では従来、「現場管理は紙とExcel」「経理関係はパッケージソフト」というように業務に応じてバラバラに管理していた。そのため、重複する作業も多く、非効率だったという。しかし、FileMakerのカスタム Appを導入することで、業務時間を30%超削減、さらに顧客履歴の管理を一元化することで、顧客満足度の向上も行えたという。
現在では、営業の提案から、工事、アフターフォローまですべてFileMaker上で完結できるようにしており、営業担当、施工担当の職人を含む、全社員がiPadを所有しFileMakerのカスタム Appを利用している。
アジャイルで2カ月の短期導入
FileMakerをフル活用するワイドアルミだが、当初から導入を検討していたわけではないという。
「最初は、社員数が増えて現場管理ソフトを刷新するタイミングで、なにか新しい取り組みをしたいと考えていました。しかし、自分の考えていることをすべて網羅できる既存製品はなく、また個別に構築すると数百万円ほどのコストが掛かることが分かったため、決めかねていました」と巾社長は話す。
「ある日、以前からつながりのあるラディックスの担当者に自分が利用したい製品のイメージを書いた紙を見せたところ、『FileMakerで実現できるのでは?』と提案を受けたことがきっかけです」(巾社長)
導入支援を行ったラディックスは、以前からワイドアルミのコピー機や電話、FAXなどのハード機器の納入・保守を中心に付き合いがあった企業。業務の「一元管理」という効果も意識して同社へ依頼したという。ラディックスとしては、販売管理ソフト構築の実績とそれに伴うノウハウを持っていたこと、社内でFileMakerの構築経験があったことから、提案に至ったと話す。
2015年12月、構築期間2カ月という短期間で導入。巾社長は「やりたいと思ったら、今すぐに始めたい性格なんです」と笑う。
構築期間が短かった分、運用しながらバグを修正していく「アジャイル方式」で利用を開始。ラディックス担当者は「社員数が少ないワイドアルミでは、ある程度の枠組みを構築して早いタイミングで導入したほうが、結果的に早い構築が目指せるのでは」と考えたことが短期間導入の要因だと話す。
導入から1年後までにiPadをワイドアルミ全社員へ支給。よりFileMakerプラットフォームを使いやすい環境に整えた。
全業務管理をFileMakerに統合する怖さはなかったのだろうか?
「ひとつに集約する『怖さ』は全くありませんでした。私自身が独立して会社を立ち上げている経験があるなか、新しいことへチャレンジする気持ちの方が勝りました。また、困ったらすぐに対応してくれるだろうというラディックスとの信頼関係も要因です。営業担当者の人間性まで見込んだ契約ですね(笑)」と巾社長は話す。