デロイト トーマツ コンサルティングは9月19日、企業の健康経営を支援するアプリケーション「WellMe」の提供を開始した。WellMeは、健康経営関連データを集約し、KPIを可視化、ダッシュボード上で容易に確認できるようにするソリューション。データ推移を把握し、施策の有効性を検証できるため、改善のためのPDCAを高頻度に回すことができるという。
ヒューマン・キャピタルリーダー執行役員/パートナーの土田昭夫氏はまず、現在の「働き方」は、生産年齢人口の減少や、過重労働・ストレスの増大、ワークライフバランス、ミレニアル世代の台頭といった価値観の変化などを背景に、さまざまな問題が発生していることを指摘。これらを解決するために「働き方改革」に取り組み、価値ある人材の獲得・維持を図っていくことは必須になってきたと説明した。
そのなかでデロイトが提唱しているのは「生産性向上(会社視点)」と「働きがい向上(従業員視点)」の2つを柱にした働き方改革だ。「会社寄り株主寄りの話にいきがちですが、生産性向上だけでなく、従業員の視点を持つことが重要です。実際に、実態調査を行うと、生産性の向上だけでなく、従業員の心身の健康の向上や従業員満足度の向上を目的にあげる企業が多くなっています」と土田氏は話す。
そこで注目されているのが、企業が従業員の健康に配慮することで、経営面での成果も期待できる「健康経営」という考え方だ。デロイトの調査では「健康経営を実施中/検討中/関心がある」という回答は85%にも達している。健康経営で重要なのは、心身の健康の維持・増進だけでなく、従業員が働きがいを持って働ける状態の実現までを見据えて取り組むことだという。
具体的には、「健康状態の可視化」をレベル1とすると「健康の維持・増進」がレベル2、それら2つを組み合わせて、従業員が働きがいを持って働ける「Well-being」がレベル3と定義される。このレベル3を実現してはじめて「企業としてのブランド価値が向上できる」(土田氏)ことになる。
土田氏によると、働きがいを高めるには、コミュニケーションを密にしたパフォーマンスマネージメントがキーワードになる。例えば、短周期・高頻度の目標設定やフィードバック、カウンセリング・コーチングなどだ。実態調査では、実際にこれらに取り組む企業は50%に及んだ。
ただ、取り組みがうまく進んでいない実態も明らかになっている。施策改善にKPIを活用しているのは22%にすぎず、改革の効果を感じられたとする企業も49%に留まっている。こうした課題を解決しようとするのが「WellMe」だという。
「健康経営施策のモニタリングや効果的なパフォーマンスマネジメントを支援します。経営者視点のKPIモニタリングと、従業員視点でのWell-beingの推進の両面を同時に支援できることが大きな特徴です。また、高いユーザビリティと低価格帯を実現し、スピーディーに導入できます。導入にあたっては、現状把握から計画、仕組みづくり、運用改善のマネジメントサイクルを作ることが重要です。その中心になるのがWellMeなのです」(土田氏)
続いて登壇した、Digital HRリーダー シニアマネージャーの田中公康氏は、WellMeの詳細とデモを実施。ソリューション開発には、ウフル、セールスフォースドットコムが協力している。同ソリューションは、Salesforceのビジネスアプリケーション向けクラウド基盤「Force.com」上で動作しており、大きく「健康経営ダッシュボード」と「従業員向けアプリ」の2機能を備えている。
健康経営ダッシュボードは、施策の進捗や改善状況を確認できる機能と、特に課題と思われるKPIの詳細を確認する機能を搭載している。これにより、施策実施のPDCAサイクルの効率的な実施が可能になるという。
また、従業員向けアプリでは、心理状態の簡易検査「Pulse Survey」、フィードバックを得る「Check-in」、健康状態やワークライフバランを確認する「ログイン時アンケート」、リアルタイムのコミュニケーション「Chatter」の4機能が利用できる。これらにより、心身の健康状態の可視化と、働きがい向上のサポートに貢献できる。
「例えば、ダッシュボードを使って、健康に関連する数字の1つであるアブセンティズム指数(欠勤)が低下していることに気付いたとします。この場合では、原因を探るために部門間で比較して対象部門を特定し、Chatterを使って具体的な対策を指示するといったことができます」(田中氏)
デモでは、これら一連の流れを、人事部門、事業部門、グループリーダー、グループスタッフのそれぞれの立場から解説した。例えば、指示のメールをもらった部門の担当者は「メンバーとのコミュニケーションが足りなそう」「特に30代で多く、職場の雰囲気が荒れているようだ」「悪化しているグループ1の担当者に指示を出す」といった判断を行っていく。
その指示をグループのリーダーに伝えると、指示を受けたグループのリーダーは、Check-inを使って、コミュニケーションの状況を把握し、Chatterを使って、スタッフに改善策を提案する。スタッフは、自分の健康状態をPulse Surveyやアンケートで把握して改善に取り組んでいく。
「ポイントは、リアルタイムな可視化による迅速な状況把握、ドリルダウンによる原因の特定・把握の容易性、アプリ内でアクションプランの展開まで完結できることの3つです。コミュニケーションツールも内包されており、会社全体でPDCAサイクルをまわせるようになります」(田中氏)
提供価格は、健康経営ダッシュボードが月額8000円、従業員用スマートフォンアプリが1ユーザー月額500円(いずれも税別)。セールスフォースが展開するアプリマーケット「AppExchange」からインストールできる。