タレントマネジメントソリューション「コーナーストーン」を提供する米Cornerstone OnDemandにてタレント担当バイスプレジデントを務めるキンバリー・キャサディ氏は、人事部門で20年のキャリアを積んできただけでなく、製造部門のオペレーションを担当したこともあるというユニークな経歴を持つ。そんな氏がCornerstone OnDemandに参画したのは、5年前のことだ。

人事一辺倒ではなく、業務部門の現場も知るキャサディ氏の目に、人事業務にテクノロジーを活用すること、そして自社ソリューションであるコーナーストーンはどう映っているのか。同社の人事業務への取り組みを交えつつ、キャサディ氏にお話を伺った。

人事で「ITを活用する」というコト

――キャサディさんが人事の業務にITを使い始めたのは、いつ頃からですか。

キャサディ氏:テクノロジーを人事業務で使うようになったのは、ここ10年くらいのことです。初期は、人事関連のデータ管理やパフォーマンスマネジメントに使う程度でした。今のようなITを駆使したタレントマネジメントができるようになったのは、Cornerstoneに入社した5年前のことです。コーナーストーンを使うようになり、初めて「自分が遅れている」と感じました。

――どんな点で苦労されたのでしょうか。

キャサディ氏:使い方自体は、普段は顧客のサポートを行っている社内の専門家たちの力を借りて学びましたが、難しいのはシステムの操作方法ではなく、「どのように情報を活用していくか」ということでした。5年前は、今ほど(コーナーストーンの)予測型アナリティクスの機能も充実していなかったので、自分の経験や知識を基に解釈していったんです。今も経験や知識は活用していますが、コーナーストーンの機能でかなりの部分ができるようになったので、煩雑な処理はシステムに任せることができています。

――「人材」をITで管理することについてどう思われますか。

キャサディ氏:人事部門の人間は統計学者ではないので、データの解釈方法は知りません。データ解析の教育やトレーニングを受けていないほうが一般的です。それは、以前は大した人事データが存在しておらず、せいぜい社員の個人情報くらいだったというのもあると思います。けれども、今では人材にまつわる膨大な量のデータがあります。私のような人事の専門家が、それらのデータを紐解いて読み取っていくサポートをしてくれるのが、タレントマネジメントソリューションです。

米Cornerstone OnDemand タレント担当バイスプレジデント キンバリー・キャサディ氏

――従来の人事システムに加え、タレントマネジメントシステムを活用することで、どのようなメリットが得られましたか。

キャサディ氏:コーナーストーンでは両者を統合して、人事データをタレントマネジメントにも活用できるようになっています。例えば「トレーニングや学習コースをたくさん修了している従業員のパフォーマンスは上がっているのかどうか」「退職した人間は、トレーニングをどのくらい受けていたか」といった相関関係を把握することが可能です。

当社の事例ですが、当社では本社のほかいくつかの拠点では福利厚生の一貫として、オフィス内でマッサージを受けられるようにしています。マッサージを受ける前にシステムに登録する仕組みにすることで、マッサージがその後のパフォーマンスの向上につながるかどうかをチェックして、もし効果がないようならば制度を中止してほかにコストを使おう、といった判断が可能です。

――そういった試みは、従業員エンゲージメントを高めることにもつながりそうですね。ほかにも、従業員エンゲージメントを高める上で重視していることはありますか。

キャサディ氏:従業員が何を欲しているのか、その声に耳を傾けることです。当社ではエンゲージメント調査を実施し、要望があったものを順次提供しています。これまでの例としては、食べ物が欲しいとか、学習機会が欲しいといった声が挙がったことから、朝食サービスを提供したり、「Development Days」を開催したりしました。

最近は、女性従業員の妊娠のためのサポートや、産休制度の充実が要望として増えています。(拠点のある)国によってそもそも産休という概念が無いところもあるので、そういった地域では当社が社内制度を用意したりもします。

――産休制度のように、国によって従業員のニーズが異なる部分もあると思いますが、個々に対応しているのでしょうか。

キャサディ氏:本社発信の影響が強い印象があるかもしれませんが、できるだけ各国の文化に配慮して、グローバルにそれぞれの地域の従業員が必要としているものを提供していくように心掛けています。

とは言え、拠点ごとに最適化するだけではなく、CornerstoneOn Demandとしてのつながりも大切にしています。その1つが、年に1度、全ての拠点で同じ日に開催する「Beach Day」という社内イベントです。拠点の立地にもよるので、開催場所は必ずしもビーチではありませんが、同じ日にパーティーをすることで連帯感を高めています。これは在宅勤務を選択している人たちも同様です。配分された予算を使って、家族などと過ごしてもらっています。