日本マイクロソフトが9月1日に開催した「Microsoft Japan Partner Conference 2017 Tokyo ~ Inspire Japan!」の基調講演では、ユーザー企業の事例も紹介された。

北國銀行とFIXER、ミツフジとソフトバンク・テクノロジー、エイベックス・グループ・ホールディングス、Preferred Networksらが登壇。各企業の施策が具体的に紹介された。

本稿ではその内容をレポートする。

来店不要の銀行サービスへ - 北國銀行

北國銀行 代表取締役専務 杖村 修司氏

北國銀行とFIXERの発表では、北國銀行 代表取締役専務の杖村 修司氏とパートナーのFIXER 代表取締役社長 松岡 清一氏が登壇。”デジタルバンキング”や”クラウドバンキング”に取り組む北國銀行がどのようにして自社の業務や働き方を改革してきたかを紹介した。

北國銀行は石川県を本拠に北陸3県で金融サービスを展開する地方銀行だ。石川県で87店舗、富山県で11店舗、ATM406台を展開し、従業員2252名、預金残高は3兆1916億円という規模となる。

これまでに勘定系のオープン化や、地銀として初めてとなるシンガポール支店の開設、働き方改革といった大きなプロジェクトに取り組んできた。

「働き方改革では、生産性向上に向けた取り組みとして、Windows端末を使ったシンクライアント化とペーパーレス化を導入。2013~2014年で段ボール箱 計1万4000個分の紙を廃棄するなど成果を出しました。2015年は資金利益の減少を経費削減で補填して、過去最高益を実現することができました」(杖村氏)

FIXER 代表取締役社長 松岡 清一氏

FIXERの松岡氏は、これらの取り組みについて「すごい銀行! サーバでの改革もぜひ提案したいと密かに思っていた」という。FIXERは、Azureのフルマネージドサービス「cloud.confg」などを提供するクラウドインテグレータで、2017年のMicrosoft Country Partner of the Year(Japan)受賞企業だ。

そんな両社が取り組んでいるのが、Microsoft Azureと勘定系システムを連携させ、顧客ニーズに合わせたサービスを迅速に提供する次世代クラウドバンキング「北國クラウドバンキング」だ。

具体的には、キャッシュレス、ペーパーレス、印鑑レスの3レスなど、利便性を徹底的に追求し、勘定系処理については来店を不要にする。一方、リアル店舗では、店舗を縮小しながら、高付加価値コンサルティング営業を図る。

次世代クラウドバンキング

杖村氏は「ITを駆使した金融サービスを展開することで、ビジネスモデルそのものを変えていこうとしています。有人店舗が減っても付加価値を高め、リアルとデジタルの双方のレベルを上げていけば顧客満足度は上がります。キャッシュレスも含めてデジタルが進んだ地域だという魅力を打ち出し、人々の生活向上につなげていくつもりです」と展望を示した。

また、松岡氏も「基幹系のクラウド化を見据えながらSoE領域からクラウド化を推進しています。クラウドバンキングによって商圏が拡大すれば、インバウンド需要の取り込みやそこで得たノウハウ、仕組みの地方への還元にもつながります。北陸からキャッシュレス、そこにはAzureという世界を実現していきたいと思います」と意気込みを語った。

生体情報を取得するタンクトップ - ミツフジ

ミツフジ 代表取締役社長 三寺 歩氏

ミツフジとソフトバンク・テクノロジーの発表では、ミツフジ 代表取締役社長の三寺 歩氏と、ソフトバンク・テクノロジー 取締役常務執行役員の眞柄 泰利氏が登壇。ミツフジが展開するウェアラブルIoTデバイスブランド「hamon」の取り組みを紹介した。

ミツフジは京都の西陣織から繊維業、ウェアラブル機器メーカーへと業容を変革してきた企業だ。hamonは、生体情報をモニタリングする銀繊維ウェアで、タンクトップとして日常的に着ることで、導電性の繊維から心電、心拍、活動量といった生体情報をリアルタイムに取得できる。取得したデータは、クラウド上に蓄積し、さまざまな用途に向けた分析を行うことが可能だ。

三寺氏は「IoTのウェアラブル領域は参入が難しいという問題があります。スマートウェアをやりたいと思っても、糸からクラウドまであらゆる産業の方とお話をしてモノを作っていかなければなりません。私どもは西陣織の技術で糸をつくり、ソフトバンク・テクノロジーさんの力を借りながら、クラウドまで一気通貫でものをつくることを1年半かけてやってきました。すべてを1社でやるのではなく、さまざまな方と協業しながら日本発のウェアラブルとして世界に展開していきたいと思っています」と呼びかけた。

ソフトバンク・テクノロジー 取締役 常務執行役員 眞柄 泰利氏

また、眞柄氏は、hamonを支える技術として、ソフトバンク・テクノロジーが提供する「セキュアIoTプラットフォーム」を紹介した。

同プラットフォームを使うことで、認証された端末からのみサーバへのアクセスが許可され、生体情報を安全にクラウドにアップロードできるようになる。安全なデバイスファームアップデートも可能だ。

眞柄氏は「グループ企業のRambusやCyberTrust、Miracle Linuxの技術を活用し、製造段階での電子証明書基盤の実装や、IoTデバイスのライフサイクル全体の運用サービスを提供します。基盤には、高い信頼性と柔軟性を持つAzureを採用しました」と解説した。

会場では、hamonを使って心拍や活動量をリアルタイムに可視化するデモを披露。ユースケースとして、従業員の体調変化を見える化し、予兆を管理できることを示した。

タンクトップから生体情報を収集するデモ