7月26~28日に開催された「総務・人事・経理ワールド2017 HR EXPO」の専門セミナーでは、サイボウズ人事部マネージャー 青野誠氏が登壇。「多様な働き方の社員を会社はどのように評価するべきか? ~サイボウズが進める人事戦略~」と題し、サイボウズが取り組むユニークな人事評価制度が紹介された。本稿では、その内容をレポートする。
きっかけは「離職率」
ライフスタイルに合わせて働き方を選べる「選択型人事制度」や、図書館・カフェでも働くことができる「ウルトラワーク」、最大6年の「育児休暇制度」など、ユニークな人事の取り組みで知られるサイボウズ。社員は640人(派遣社員119名含む、役員除く)で、平均年齢は32.4歳(本社正社員)、売上高は80億円という規模の同社は、人事制度の方針として「100人いれば100通りの人事制度」を掲げ、多様性を重視し、それぞれの望む働き方や報酬を実現していくことを目指している。
サイボウズ人事部マネージャー 青野誠氏 |
働き方改革に取り組み始めたのは2005年のこと。きっかけは、当時の離職率が28%という極めて高い数字だったことだ。青野氏は、当時の様子を「私もベンチャーなんだから長時間働くのが当たり前だと思っていて、むしろそのほうがカッコイイといった雰囲気すらありました」と振り返る。当然のように「上司が帰らないから帰れない」「会議室で寝てそのまま出社」「有給未消化、休みづらい雰囲気」といった光景が見られたという。
給与の引き上げや業務の転換など引き止め工作を実施したが、思ったほど成果が上がらず、人事制度や働き方について、さまざまな改革を実施していった。例えば、冒頭で触れた選択型人事制度は、「ライフ重視型」「ワークライフバランス型」「ワーク重視型」の3つの働き方を月単位で変更するもの。育児・介護が必要な社員なら「残業なし、または短時間勤務でいい」ライフ重視型を、「長時間働いてもかまわない」なら裁量労働制にしてワーク重視を選択するといった具合だ。
その後、在宅勤務を導入し、働く時間に加え、働く場所も選べるようにした。働く時間は「時間に関係なく働く」「少し残業して働く」「定時・短時間で働く」の3パターン、働く場所も「ほとんどオフィス(または客先など)にいる」「まあまあオフィスにいる」「ほとんど在宅勤務」の3パターンで、それらの組み合わせで9種類の働き方を選択できる。さらに、時間と場所を一時的に変更できるウルトラワークも導入した。
「ウルトラワークは『台風が来るから家で』『集中したいからカフェで』など、理由を問わず利用できることがポイント。なかには『Amazonから荷物が届くから』『新型iPhoneを買いに行くから』といったケースもあります。そのほか、子連れ出勤や育児休暇の長期化、認定されればいったん退社しても再入社できる『育自分休暇』などにも取り組んできました」(青野氏)
育児休暇は、子どもが小学校に上がるまでのイメージで最大6年、男性・女性を問わず利用でき、妊娠したことがわかったら、いつでも産休をスタートできる。これにより出産を機に退職する社員はゼロになった。これまでの最長は4年8カ月後に復帰したケースだ。
また、育自分休暇は、認定されれば、いったん退職した後6年間は復帰可能にする制度で、社外で新たなノウハウを得た社員を引き戻し、組織の強さを高める狙いがある。今まで制度を利用して復帰した人は8人で、なかには海外青年協力隊でボツワナに行った後、復帰したケースもある。
キャリア形成のための工夫も行っている。「キャリアも100人100通り」にするため、他部署に体験入部できる「大人の体験入部」という制度を実施。最長3カ月まで可能で、他部署で働くことで次のキャリアを考えたり、今の業務に生かしたりできるのだという。
こうした働き方改革の結果、2005年に28%だった離職率は2016年に4%にまで低下した。女性社員数は全体の約半数に上昇し、出産した社員は100%復帰するまでになった。