ウイリス・タワーズワトソンは8月10日、「フューチャー・オブ・ワーク(仕事の未来)」をテーマにしたプレスセミナーを開催した。

登壇した米ウイリス・タワーズワトソン タレント&リワード部門 マネージングディレクター ラビン・ジェスササン氏は、AI(人工知能)やロボティクスといった技術革新が一人一人の働き方にもたらすインパクトや、企業組織に迫る変化について展望を示した。

第4次産業革命が仕事をどう変えるのか

「ダボス会議におけるここ3年間の話題の中心は第4次産業革命です。『Convergence(収束)』がキーワードになっています」

――ジェスササン氏は冒頭、世界経済フォーラムの年次総会であるダボス会議において、昨今議論の焦点となっているのは第4次産業革命であることに言及した。

米ウイリス・タワーズワトソン タレント&リワード部門 マネージングディレクター ラビン・ジェスササン氏

産業界の収束が進む今、共通するテクノロジーのいくつかは同時に成熟期を迎えている。そのうちの1つがモバイルだ。従来型の端末以外にも、ウェアラブル端末や医療目的の飲み込めるデバイスなども登場している。また、AIやクラウド、ストレージ、ソーシャルメディアといった領域でも活発な動きが見られる。

第4次産業革命が、これまでの3回の革命と大きく異なるのは変化のスピードだ。複数のテクノロジーが同時に成熟する様は、かつて社会が目にしたことのない現象だろう。

こうした収束感やスピード感が、人々の仕事に影響を与えないわけがない。

「2015年の段階で最も需要がある職種のうち、9つは10年前には存在すらしませんでした。ここ130年ほどの間に生まれた専門職も、今後大きく姿を変えたり、失われたりしていくことになるでしょう。今から小学校に入学する子どもの世代のうち、65%は将来、まだこの世に存在していない新しいタイプの仕事に就くことになり、キャリアのなかで3~4回はスキルトレーニングをやり直さなければならないと予想されています」(ジェスササン氏)

では、現存する主な職業は、いつ頃誕生したものなのだろうか。

第二次産業革命の頃、GMやダイムラー、フォードといった大手企業が家内制手工業をまとめ上げ、そこで行われていた作業を「ジョブ(仕事)」とする工場のライン生産方式が主流となった。

続く第三次産業革命は、機械化の第一世代だとも言える。「ここでITが台頭し、設計・製造と供給を分ける企業が登場し始めました。これが可能となったのは、外注することに対してコスト面・品質リスク面を把握できるようになったからです」とジェスササン氏は説明する。

このように組立ラインを分解することによって生まれた概念が、いわゆる「アウトソース」である。そもそも企業とは、人々が仕事をするために集合して形成された組織だ。それが、ここにきて「契約の結合体」になったのである。契約の結合体としての企業では、アウトソーシング可能な仕事が主流となる。

そして第4次産業革命のさなかである今、今度はジョブの分解が始まっている。その先駆けとなったのがライドシェアサービスを提供するUberだ。同社は、AIを活用することでジョブのなかの「dispatcher(運行管理)」と呼ばれる部分をなくし、業界を大きく変えた。これまでは、タクシー会社が社内に抱えたドライバーを管理していたが、変革によって参加したい人が誰でもジョブに参加できるようになったのである。

このように、ジョブを分解してタスクに分けることで、分けられたタスクの一部を何かに代替させることが可能となる。代替先はAIかもしれないし、タレントプールかもしれないが、それによって得られるコスト面のメリットは大きい。ジェスササン氏曰く「まさにゲームチェンジャー」だ。