ソフトバンクの法人向けイベント「SoftBank World 2017」に、ソニーモバイルコミュニケーションズがブースを出展した。日本国内のAndroidスマートフォン市場でシェア1位のXperiaシリーズだが、その法人展開はどうなっているのだろうか。

ソフトバンク版「Xperia XZs 602SO」

会場には、Xperiaシリーズの最新モデルとしてソフトバンク版「Xperia XZs 602SO」が並んだ。ほかにもNTTドコモ、KDDI版の同モデルが存在するほか、ドコモからは4Kディスプレイの「Xperia XZ Premium」も発売されている。

いずれも、スマートフォンとしてのハードウェアは個人向けと法人向けで共通の仕様で違いはない。Xperia XZsでは、前モデルの「Xperia XZ」との違いとしてメモリー積層型CMOSセンサーの採用によりカメラを強化。XZでは3GBだったメモリーも4GBに増加した。

法人向けXperiaのハードウェアは個人向けと共通

法人向けXperiaが個人向けと異なるのは、デバイスの管理機能だ。OSアップデートの抑止や、業務用アプリのサイレントインストール、遠隔からのデータ消去、アプリ制限、通信制限など、法人ユーザーが求める機能を提供している。

カメラを無効化した状態

また、個人向けXperiaで培ってきたカメラ性能はビジネスの現場でも活用されている。エレベーターのメンテナンス作業のように暗所での撮影も、フラッシュを使わずに明るく撮れることが高評価を得ているという。

特にソニーモバイルが強みとしているのが、セキュリティだ。たとえばセキュアなブート処理を保証する「Verified Boot」では、グーグルがAndroidに標準で組み込むよりも先に、Xperiaで同様の仕組みを実現するなど、設計から製造までセキュアなプロセスを持っていることが強みだという。

その結果、Xperia XZでは日本のメガバンクが大量導入に踏み切っている。これまで金融機関ではセキュリティ面からAndroidへの拒否感が強かったとされる中で、ソニーモバイルの地道な取り組みが功を奏したといえるだろう。

法人需要への個別対応に向け、体制を強化

ところで、ソニーモバイルにおける法人向け事業はどれくらいの割合を占めているのだろうか。5月の「Sony IR Day 2017」ではソニーモバイルの十時裕樹社長から事業戦略が語られたが、法人事業については明確に言及されなかった。

法人事業の担当者によれば、ソニーモバイルとして個人向けと法人向けの数字を分けて紹介するほどには、法人事業の規模は大きくないのが実情だという。ただし、社内では法人向けの部門も作り、大手キャリアの法人営業と連携しながらXperiaシリーズを展開していく体制を整えたとしている。

法人事業の拡大にあたっては、顧客への個別対応に鍵がありそうだ。たとえばSoftBank Worldの基調講演では、Androidバージョンの断片化が取り上げられた。法人ユーザーによってはOSアップデートの抑止が必須機能となっているが、同時に端末をセキュアに保つことも必要だ。

一見すると相反する要求だが、こうした要求も個別に対応していくサポート力が求められる。Xperiaシリーズという優れた端末を法人向けに展開していく上で、まずは体制を整え、足場固めを進めているのが現状だ。