IoT通信プラットフォーム「SORACOM」を展開するソラコム主催のイベント「SORACOM Conference “Discovery” 2017」が、7月5日に都内で開催された。IoT関連の出展で賑わった同イベントの基調講演には、ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏などが登壇。「Discovery ~IoTの最先端を探しに~」と銘打たれた同講演では、SORACOMの最新動向と合わせて、複数の新規サービスの提供開始が発表された。

7,000を超えた顧客に向け、ソラコムが放つ2つの新サービス

2015年9月、通信とクラウドを融合したIoT通信プラットフォームとして提供が開始されたSORACOMは、IoT/M2Mに最適化された無線通信を最低1回線から利用でき、比較的安価なことが特徴だ。2016年12月に米国、2017年2月に欧州でサービスを開始し、複数の通信キャリアとの契約によって現時点で120を超える国と地域に対応している。現在、7,000以上の顧客・パートナー各社が利用しており、顧客にはトヨタやコマツ、IHI、大阪ガス、ローソンなど大企業も名を連ねる。

ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏

その一方で、スタートアップ企業との連携にも積極的に取り組むほか、「デバイスパートナー」「ソリューションパートナー」「インテグレーションパートナー」「ネットワークパートナー」によるパートナープログラムも拡大しているという。

冒頭、登壇した玉川氏は「申請パートナーは350社以上に達しており、当社としてはそうしたパートナーと連携して顧客からの要望に応えていきたいと思っています。ソラコム認定デバイスも80種類以上を数えるようになりました。日本発のサービスで、より徹底したグローバル展開を目指しています」と意気込みを語った。

SORACOM上でIoTデバイスの設定を管理する「SORACOM Inventory」

玉川氏に続き、ソラコム 執行役員 プリンシパルソフトウェアエンジニア 片山暁雄氏が登壇。同日より提供開始となるデバイス管理サービス「SORACOM Inventory」の概要を発表した。

SORACOM Inventoryは、SORACOM上でIoTデバイスの設定の管理や状態把握、コマンド実行などを可能にするサービス。Open Mobile Alliance(OMA)が、M2Mデバイスの管理とサービス提供を実現する軽量な仕組みとして標準化した仕様「OMA LightweightM2M(LwM2M)」をベースとしており、デバイス管理のためのフレームワークを提供する。

「『SORACOM上でデバイスの管理も行えるようにしてほしい』という声が日に日に高まっており、そうしたニーズに応えたのがSORACOM Inventoryです」(片山氏)

従来、個々のIoTデバイスの状態や設定の管理、デバイスの再起動、コマンド発行、データの配置などを行うには、アプリケーションやユースケース別に開発する必要があった。しかしSORACOM Inventoryでは、SORACOMのWebコンソールやAPIなどを活用することで、各種デバイスの設定の確認や更新、ファームウェアの確認・更新、コマンド実行、デバイスの再起動、データ配布や各種メトリクスのモニタリングをリモートからセキュアに実現できるという。

SORACOM Inventoryの利用イメージ

パケットのトラフィック制御を実現する「SORACOM Junction」

続いて登壇したソラコム 最高技術責任者 安川健太氏は、同日提供開始の2つ目の新サービス「SORACOM Junction」についての発表を行った。

SORACOM Junctionは、SORACOM上でパケットに対する各種処理を可能にするサービス。SORACOMのコアネットワーク上のパケット交換機能を有する「Virtual Private Gateway(以下、VPG)」を通るパケットに対して、「インスペクション」「ミラーリング」「リダイレクション」の3つの機能を提供する。これにより、トラフィックの可視化やセキュリティの強化、トラフィックの制御などが可能になるという。

インスペクション(左)、ミラーリング(中央)、リダイレクション(右)の構成イメージ

「SORACOM Junctionは、『IoTデバイスがやり取りするパケットに対してさまざまな処理を行いたい』という顧客からの要望を実現したものです。SORACOMのアカウントさえあれば、誰もがオペレーターとなって自由自在にトラフィックを制御できるようになります。これを活用して、ぜひ新しいイノベーションを起こしてください」(安川氏)