SaaSベースのタレントマネジメントソリューション「コーナーストーン」を世界191カ国・43言語で展開する米Cornerstone OnDemandは米国時間6月5日~6月7日、同社の年次カンファレンス「Cornerstone Convergence 17」を米国サンディエゴにて開催した。大小合わせて60以上のセッションが実施される同カンファレンスには、ユーザー企業のIT部門・人事部門を中心に2,000名を超える参加者が集まり、積極的な情報収集を行っていた。
「Realize your potencial(可能性を引き出す)」をタグラインに掲げる同社は、1999年の創業以来、早期からSaaSベースで人材を育成・教育するためのプラットフォームを提供し、2005年には教育だけでなく採用や業績管理などを統合したタレントマネジメントシステムを構築。その後も、企業向けソーシャルネットワーキングや、ユーザーサポートサービスなど、さまざまな機能の追加・強化が行われてきた。
今年初めからは、各機能モジュールを「リクルーティング(採用)」「ラーニング(学習)」「パフォーマンス(業績管理)」「HR(人的資源管理)」の4つに分け、スイートとして展開している。
「The Age of Experience」と題された6月6日の基調講演では、登壇したCornerstone OnDemand 社長兼CEO アダム・ミラー氏により、継続的な学習によって全ての従業員の可能性を引き出すことの重要性が語られるとともに、それをサポートするコーナーストーンの新機能が発表された。
業務のスキル学習も「パーソナル化」の時代
ミラー氏は冒頭、技術の進化とともに「パーソナル化の時代がやってきた」と切り出した。
「10年前に比べ、オンラインショッピングはずっとパーソナル化されました。時には、自分が何が欲しいのかについてショップ側のほうがわかっていて(レコメンドしてくるので)気持ち悪いほどです。旅行先でレストランを選ぶにしても、アプリがすぐに近くのレストランを提示してくれます。自分がどこにいても、欲しいものを教えてくれる。そうしたパーソナル化があらゆるところで進んでいます」(ミラー氏)
このパーソナル化のトレンドは、買い物やレストラン検索に留まらず、動画や音楽を消費する方法にも訪れている。視聴すればするほどカスタマイズされ、よりユーザーの好みに合ったコンテンツがレコメンドされるようになる仕組みはもはや珍しくないだろう。
ミラー氏は、「我々が提供するラーニングの環境も、こうした変革に対応する」とし、職場における学習体験を革新するものとして、ラーニング・スイートの機能強化を発表した。そのうちの1つが、学習機能のパーソナル化だ。
これは、個々の従業員の職務はもちろん、これまでに検索・閲覧した学習コンテンツの履歴や、今何についてのトレーニングをしているのか、ほかにどういったコースを取っているかといったデータを基に、機械学習によってよりパーソナル化されたレコメンドを行うというもの。キュレーションも可能となっており、結果は全て、動画配信サービス「Netflix」のようにサムネイル画像が並び一覧性のあるユーザーインタフェース(UI)で提供される。
従業員はそれぞれに用意された専門コースだけでなく、関連コンテンツやYoutubeのコンテンツなど、システム外部の非公式学習コンテンツも組み合わせた学習プレイリストを独自に作成し、同僚と共有することができる。
また、協調型学習機能にクラウド共有機能が追加され、コンテンツの相互ブラウズが可能となった。これにより、トレーニングをリアルタイムでライブ配信したり、同じような学習テーマに関心を持つ同僚とつながったりといったこともできるようになる。
これらの機能強化は、どのようなインパクトをもたらすのか。ここでステージに招き入れられたのが、米Bersin by Deloitteの創設者兼プリンシパルのジョシュ・バーシン氏だ。氏は「Cornerstoneは学習の管理だけではなく、『体験』が重要だと気づいたわけです」とコメントする。
「ビデオラーニングのような新しいコンセプトが登場しましたが、従来のラーニングマネジメントシステムはそうしたものに対応する設計ではありませんでした。そのため、(対応するには別途)ラーニングエクスペリエンスプラットフォームを用意することになります。しかし、Cornerstoneはラーニングエクスペリエンスプラットフォームをラーニングマネジメントシステムの上に構築して、両方を可能にしました。これを実現したベンダーは、唯一Cornerstoneだけだと思います」(バーシン氏)
氏は「L&D(教育と人材開発)には変革が必要だ」とも強調する。技術の進化に合わせて、企業は従業員の学習管理や学習体験のプロセスについても考えなければならない。そうした意味で「皆さんの仕事はコンテンツエクスペリエンスデザイナーであり、同時にアナリストとして、『従業員がいかにシステムを活用して仕事を改善していくか』を考える必要があります」と会場に呼びかける。
「コーチングやラーニングなど、L&Dのプロとしての皆さんのスキルが必要になってくる領域はたくさんあります。そして、システムの重要性が高まっているのは、それらの活動をサポートしてくれるものだからです」(バーシン氏)