5月10日から12日にかけて東京ビッグサイトにて開催された「Japan IT Week 春」。5月11日の特別講演には、アリババの代表取締役社長CEO、香山誠氏が登壇した。講演テーマは、「中国最大の越境ECサイト、天猫国際を通じた中国市場開拓」だ。

増加する中国越境ECの購買額は「爆買い」の倍以上!

中国越境ECの成長率はここ数年35%前後という高い水準で推移しており、数年後には10兆円市場になると予想されている。なかでも購入先国として安定して人気が高いのが、日本だ。その内訳は生活雑貨が最も多く、ビューティー、食品、アパレルと続いている。日本からの中国越境ECの購買額は、2016年には1兆366億円に達しており、中国から日本に旅行で訪れて店頭で購入するインバウンド消費、いわゆる「爆買い」での消費額をすでに上回っているのだ。

こうした動向について香山氏は、「中国から日本への観光客は依然として増え続けているものの、1人あたりの消費額は下がっています。その要因は、 高額商品の消費が減少しているためだと言われています」と説明する。

アリババ 代表取締役社長CEO 香山誠氏

一方、越境ECでは化粧品や家電、医療・健康用品などが気軽に手に入るようになってきているので、「わざわざ旅行先で購入して重い荷物を持ち帰らなくても……」という風潮が強まっているという。「越境ECへとシフトする流れが加速していると言えるでしょう」と香山氏は分析する。

そして香山氏は、 アリババグループが日本の消費財メーカー向けに、新しいサービスを提供する予定であることを発表した。まず1つ目が、新たなECプラットフォームとして、昨年アリババが買収した、東南アジアでトップシェアを誇るECモール「LAZADA」への出店支援の提供開始である 。

「日本のトップ消費財メーカーとも、『今年中にLAZADAでの新たな仕掛けを』と進めているところです」(香山氏)

そしてもう1つは、中国市場における、新たなマーケティングサービスの提供である。香山氏は、「我々は、中国のネットユーザーの95%に相当する約8億人の利用者について、その嗜好などに関するデータを有しています。これを日本のメーカーにも活用いただこうと考えています。中国において我々は、あたかもGoogleとAmazon、そしてFacebookの全てを持っているかのような強みがあり、そこで得られたデータをマーケティングプラットフォームとして日本企業にも提供したいということです」と話す。

2016年度のアリババの中国B2C ECの流通額は60兆円にも上る。そして昨年だけでも、年間約5億人のユニークユーザーがアリババのB2Cプラットフォームを利用しており、越境ECを利用して米国や日本から最新の商品を購入しているユーザーは、その2割程度にも達しているという。

「中国が豊かになるにつれて、越境ECの利用者もさらに増えていくでしょう。来年には、今年の1.5倍の規模になると予想しています」(香山氏)