4月26日から28日にかけて、東京コンファレンスセンター・品川で開催された「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2017」。初日のオープニング基調講演に登壇したのは、ガートナー ジャパン リサーチ バイスプレジデント 兼 最上級アナリスト、亦賀忠明氏だ。
氏の講演では、「未来志向:2020年に向けたテクノロジ、ビジネス、人材のシナリオ」というテーマの下、2020年を視野に入れた企業が、改めてどのような経営戦略・IT戦略を策定し、実行していくべきかについて語られた。
デジタル化の本質を社内で共有せよ!
今後、さらに進化するであろうテクノロジーの多くは、「破壊的テクノロジー」としてビジネスを激変させていくことが予想される。テクノロジーの進化が、より大きなインパクトをもたらすようになった今、企業では新たな人材スキルを確立することが急務だ。
講演冒頭、今回のサミット全体を通した見どころについて簡単に紹介した亦賀氏は、「グローバルでビジネスの世界に何が起きているのかをぜひ知っていただきたい。リーダーこそが変化の『肝』であり、そのために欠かせない『リテラシー』『スキルセット』『マインドセット』を、サミットを通じて獲得してほしい」と呼びかけた。
ガートナー ジャパン リサーチ バイスプレジデント 兼 最上級アナリスト、亦賀忠明氏 |
デジタルビジネスへの転換が叫ばれる今、IT部門にも変革が強く求められている。そこでIT部門が抱えている典型的な「悩み」としては、これまでになかった新しいサービスや事業、顧客体験などをいかに創出するかや、組織や企業の業態をどうやってトランスフォームするか、といったものが挙げられる。
亦賀氏は、「デジタル化は既に起こりつつある現実だ、と捉える必要があります。その上で、皆さんの組織のなかの『リアリティ』について考えていただきたいのです」と訴える。同じ会社であっても、部門ごとにリアリティは異なる。だからこそ、デジタル化の本質を共有することが大切というわけだ。
氏は「リアリティを社内で共有し、さらに新しいリアリティを発想するように心掛けてください」とアドバイスを寄せる。
デジタル化のリアリティの具体像を示すべく、亦賀氏は海外の先進企業による動向を紹介した。まず1つ目は、General Electric(GE)の「デジタルパワープラント」に関する取り組みである。
「良い物を作ったからといって、それだけで売れるとは限らない時代になった」――そう認識した同社は、製造業のサービス産業化が必須になると判断。新しい価値を生み出す試みとして発電所をデジタル化したデジタルパワープラントを発想するに至ったのである。発電所をデジタル化することで、あらゆる状況の可視化を目指したこの取り組みは、ソフトウェアへの戦略投資とエンジニアの積極的な採用を伴うものとなった。
もう1つは、シティグループによる発表である。スマホネイティブな世代にとって、もはや店舗に足を運ぶ理由はなく、また業務コストに数百億円かかっている現状をテクノロジーで置き換えが可能だと考えた同社は、「新たなテクノロジーによって30%が職を失う」との見解を示したのだ。
「フィンテックに関心が集まっていますが、フィンテックは金融という業種業態そのものを変える動きになってきています」(亦賀氏)