韓国サムスン電子の最新フラグシップスマートフォン「Galaxy S8」の発売が世界各国で始まった。現時点で日本における発売は未定だが、例年通りであれば2017年夏モデルとしての登場が期待される。
Galaxy S8の特徴は、本体の大部分を画面が占める近未来的なデザインだ。また、この連載の焦点となるビジネスユーザーにとって見逃せない新機能が「Samsung DeX」だ。
スマホがデスクトップPCに早変わり
Samsung DeXは、別売の専用ドック「DeXステーション」を介すことで、Galaxy S8の画面を外部ディスプレイに出力できる機能だ。しかも単にスマートフォンの画面を拡大表示するのではなく、最大でフルHDの画面解像度に最適化されたホーム画面が表示される。
さらにAndroidアプリは全画面表示だけでなく、WindowsやMacのようにマルチウィンドウで利用できる。Android版のMicrosoft OfficeアプリやChromeブラウザーを起動し、アプリを切り替えながらキーボードとマウスで操作する様子は、デスクトップPCそのものだ。
Samsung DeXのメリットは、スマートフォン1台にすべてを集約できる点にある。もちろん、ノートPCとスマートフォンを常に2台持ちする環境であればこうした機能は不要だが、1台で良ければ紛失の可能性が減り、管理が容易になるなど法人ユーザーにとってのメリットは大きい。
類似した機能は、この連載でもたびたびお伝えしてきたWindows 10 Mobileの「Continuum for Phones」で実現されている。しかしContinuum for Phonesはアプリを全画面で実行することしかできず、肝心のWindowsデスクトップアプリも動作しない。すべてを1台のスマホに集約するというビジョンでは先行していたものの、理想と現実のギャップが大きかった。
ただしWindows 10 Mobileのケースでは”OSとして”この機能をサポートしている。あまり大きなうねりにはなっていないものの、マイクロソフトの狙いとしては多くの端末やアプリがContinuumに対応し、大きな訴求力に繋がる可能性があった。これに対してDeXは、現時点でGalaxy S8とS8+に対応機種が限られている。
Android標準サポートの可能性はあるか
果たして、DeXに相当する機能をAndroidが標準でサポートする可能性はあるのだろうか。
実はAndroid 7.0からOS標準でマルチウィンドウ機能に対応しており、画面を分割して複数のアプリを同時に稼働できる。基本的にはDeXも、この機能を応用しているとみられる。このことから、ある程度のスペックを備えたAndroidスマホを汎用のドックに接続してデスクトップPCのように利用する機能が、そう遠くないうちに実現するのではないかと筆者は考えている。
サムスンはこの機能に先手を打ち、DeXを快適に利用できる高性能SoCを搭載したほか、発熱対策としてドック側に冷却ファンを設けるなど、実際に使える製品をいち早く市場に投入してきた。「スマホ1台にすべてを集約する」という未来に向けて、確実に一歩を踏み出したといえるのではないだろうか。