新経済連盟が主催する年次カンファレンス「新経済サミット2017」が4月6日~7日、ホテルニューオータニで開催された。世界各国のアントレプレナーやイノベーターを招待して繰り広げられるカンファレンスも今年で5回目。本稿では、初日に登壇したシリコンバレーのベンチャーキャピタルAndreessen Horowitzの共同創業者兼ゼネラルパートナー ベン・ホロウィッツ氏の基調講演の模様をダイジェストでお届けする。
次々登場する新技術をベンチャーキャピタリストはどう見るか
ホロウィッツ氏は、マーク・アンドリーセン氏とともにNetscapeを経営し、その後、America Onlineを経て、Opsware(元Loudcloud)の共同創業者兼CEOとなった。Opswareを16億ドル超でHPに売却した後、HPで副社長兼ソフトウェアビジネステクノロジー最適化担当ゼネラルマネージャーを務めた。
その後、2009年にAndreessen Horowitzを設立。同社をシリコンバレーの「顔」とも言うべきベンチャーキャピタルに成長させている。最近では、こうした自身のキャリアを描いたベストセラー「Hard Things 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」(発行:日経BP社)が話題を呼んだ。
講演は新経済連盟の代表理事であり、楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏とのトークセッション形式で進行。三木谷氏とはシリコンバレーの自宅が隣同士でバーベキューパーティする仲とのことで、ホロウィッツ氏も「こんなかたちで対談するのは新鮮だ」と笑顔を見せつつ、セッションが始まった。
まず、最近のITをめぐる動向について、ホロウィッツ氏は「自動運転やドローンなど、あらゆるモノがすごいスピードで進化していて、とてもエキサイティングな状況です。『Google Home』や『Amazon Echo』といった自然なインタフェースを備えた機器が登場し、だれでも簡単にテクノロジーに触れられるようになってきました。これはとても良いことです」と語る。
これに対し、三木谷氏が「プライバシーやセキュリティ、AIのシンギュラリティへの懸念などを抱く声もあるが……」と問うと、次のように見解を述べた。
「AIが脅威になるかどうかは誰も予測できません。これは、インターネットが登場したときも同じでした。セキュリティリスク、サイバーテロ、サイバー戦争が起こることは、当時から予見されていました。実際にそれが当たってしまった面はありますが、それでもインターネット自体をやめるという事態にはなっていません。今はAIと言っても、ディープラーニングによるチャットプログラムです。チェスや碁で人間に勝ったりもしますが、それによって、人間の脅威になると判断するまでには至りません」(ホロウィッツ氏)
一方で、今注目している技術や分野については、まずバイオロジーを挙げ、「これまでも投資されてきた分野ですが、医薬品メーカーによる投資が積極的に行われています。DNAシークエンサーやゲノム編集技術CRISPRなどの分野で、面白いアイデアや新しい可能性を生むアイデアがたくさん生まれています」と説明した。
また、ホロウィッツ氏が今、エキサイティングな新分野として挙げたのが「ドローンを空中で叩き落とす技術」だ。
「空港などの重要施設に武器を積んだドローンが複数飛来した場合に、一斉に叩き落とすには新しい技術が必要です。今、ドローンを無効化するための技術開発を行っているインターネット企業に投資しています」(ホロウィッツ氏)
では、トップクラスのベンチャーキャピタリストであるホロウィッツ氏は、何を基準にそうした投資先を決定しているのだろうか。