横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)は3月1日、VR(Virtual Reality : 仮想現実)を活用したベースボールトレーニングシステム「iCube」を導入したことを発表した。
横浜スタジアムなどに設置されているボールトラッキングシステム「トラックマン」のデータを活用して、実際の投手の球筋を忠実に再現。昨年、東北楽天ゴールデンイーグルスが導入した非透過型HMD(Head Mounted Display)ではなく、立体視メガネによる3D映像とモーションキャプチャによってVRを実現している点が大きな特徴で、来年には実際にバットを振って仮想投手のボールを打ち返せるよう技術開発中だという。
プロジェクタ投影タイプのVR、モーションキャプチャで視野調整
採用されたiCubeは、米EON Sportsが開発したVRシステム。米国では、タンパベイ・レイズほか、メジャー、マイナーを問わず複数の球団が導入している。ベイスターズは、日本野球機構(NPB)のプロ野球チームとしては初めて導入事例となる。
今回、横浜スタジアム内に開設された専用トレーニングルームでは、3D映画のような立体視用映像を投影するプロジェクター1台と、モーションキャプチャ用のカメラ5台を部屋の上部に設置。投影される映像を専用のメガネを通して見ることで3次元のVR世界に入り込める。メガネには、モーションキャプチャー用のマーカーが付いており、それを5台のカメラで認識して顔の位置と向きを捉え、視界に合わせた映像に調整している。
立体視用メガネ。フレームから張り出す球体がモーションキャプチャ用のマーカー |
スクリーンの上にある、赤く光る3つの円がモーションキャプチャ用のカメラ。スクリーンの向かい側にも2つ設置されている。打席は桑原 将志 選手 |
メガネの位置を認識して映像が調整されるため、左右の打席を変更するのも立ち位置を変えるだけ。キャッチャーの位置に座れば、キャッチャー目線で球筋を確認することもできる。非透過型HMD(Head Mounted Display)とは異なり、現実の身の回りの状況が見えるため、安全を確認しながらバットを振ることも可能だ。
投球映像は、デンマーク製のボールトラッキングシステム「トラックマン」のデータを基に生成される。トラックマンは、横浜スタジアムだけでなく、Koboパーク宮城などにも設置されており、そのデータはシェアされる仕組みであるため、iCubeは他球場のデータも活用しているという。
現時点では、ベイスターズの投手全員と、セ・パ両リーグ合わせて82人の投手が登録されている。利用時には、投手、球種、コースを選択できるほか、日時とシーンを指定して過去の投球データを呼び出すことも可能だ。背景となる球場を変更する機能も搭載されている。
遠征時でも利用できるようスマートフォン向けアプリケーションも提供されている。ベイスターズが以前からファン向けの施策で使用している「Galaxy Gear VR」を選手向けに10台用意しており、遠征時に持ち込む予定。また、簡易的なスマートフォン向けVRレンズも提供されており、没入感が不要な場合はそちらで対戦投手の投球を確認することが可能だ。
なお、これらのシステムは、NPBの協約上、試合中は利用できないという。選手は、試合開始前までに試して、相手投手の投球を頭に入れることになる。