ビッグテータ解析の專門イベント「Big Data Analytics Tokyo」が2月7~8日、東京都内で開催された。7日の基調講演には、MITメディアラボでIoTをテーマにした研究活動を行っており、Ditto Labsの創業者兼CEOでもあるデイビッド・ローズ氏が登壇。「ビジネスの接続性、デザイン、そしてIoTの新たな最先端」と題した講演を行った。

コンピュータの「目」が明らかにする真実

ローズ氏は2015年に刊行した自著「Enchanted Objects」(未邦訳)のなかで、モノがインターネットにつながり、身の回りの生活が大きく変わる様子をさまざまなユースケースとして紹介している。そうしたユースケースのなかでも、機械学習やディープラーニング(深層学習)といったデータ解析の取り組みが早期から行われてきたのが画像の分野だ。

MITメディアラボでIoTをテーマにした研究活動を行っており、Ditto Labsの創業者兼CEOでもあるデイビッド・ローズ氏

コンピュータの視覚を通して、画像や映像を処理する技術は「コンピュータビジョン」として古くから研究されてきた。画像データベースの「ImageNet」やニューラルネットの「AlexNet」など、今日のディープラーニングブームの端緒になったのも画像だ。今日のIoTの取り組みの中心にも、多くの場合、画像処理がある。

講演の冒頭、ローズ氏は上着の胸ポケットに収まりそうな小型カメラを肌身離さず持ち歩き、カメラの「目(レンズ)」が見ているものを10分間隔で24時間記録していることを紹介した。撮影した写真を連続させると、その日のローズ氏の行動履歴がほぼ全て記録されることになる。

「コンピュータの目はどんどん小さくなっています。スマートフォンのカメラはコインよりも小さい。そのスマートフォンを通して1日平均33億枚の写真が共有されています。そうしたなか、画像は、従来の写真とは異なる意味合いを持ち始めました。これまでの写真は、意図して撮影する(Intentional)ものでした。ところが、コンピュータの目を通して撮影される画像は、偶然捉えられるもの(Incidental)になったのです」(ローズ氏)

写真(画像)が意図的なものではなく、偶然捉えられるものになったということは、物を使う人間を第三者的な視点から客観的に観察することも可能になったということだ。例えば、ゴミ箱だ。ローズ氏はゴミ箱の蓋の裏側に小型カメラを設置し、何が捨てられているのかを記録することで面白いことがわかると話す。

「捨てられる物の画像を解析すると、普段どんな物を食べているかがわかります。栄養が足りているか、同じ物を食べ続けていないか、普段より食費がかかりすぎていないかがわかります。食べ物の産地や製造した場所、輸入した時期といったサプライチェーンもわかるかもしれません。もし、ゴミ箱の中に、オスカー(セサミストリートに登場するゴミ箱に住むキャラクター)が住んでいたらどうでしょう。クッキーを食べ過ぎていたら、『大丈夫か、今週もう3箱目だぞ』と注意してくれるのです(笑)」(ローズ氏)