前々回、前回と、2回に分けて日本マイクロソフトの高添氏からプライベートクラウドの選択肢について説明がありました。今回は、12回の記事を担当したエヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)の技術メンバーから、「Azure Stack TP2」を操作していくなかで整理しておくべきだと感じたところを紹介していきます。
まず今回は、Azure Stack を実際に触れることができない方でもイメージしやすいよう、Azure Stackポータルに出てくるメニューについて紹介しましょう。
余談ですが、第12回では、Azure Stack TP2のインストール時のトラブルシュート方法について紹介しました。筆者らは何度もAzure Stack TP2のインストールを行っていますが、同じTP2でも頻繁にバージョンアップされており、インストールに失敗することもなくなってきました。最近のバージョンは品質が上がってきていると感じています。
Azure Stackポータルへのログイン
作業の手順としては次のようになります。
- Azure Stackをセットアップした物理マシンにログオンします。
- Azure StackにはAzure Stackポータルにログインするためのクライアントマシン(MAS-CON01)が用意されているので、それにログインします。
- MAS-CON01にログインするとデスクトップにAzure Stack TP2ポータル用のショートカットが用意されているので、事前にAzure ADに作成しておいたAzure Stack用のユーザーアカウントを使ってAzure Stackポータルにログインします。
- ログインすると、以下のような画面が表示されます。
Azure Stack TP2のメニュー
Azure Stackポータルにログインすると、Azure Stack TP2のメニューを参照することができます。以下はAzure Stack TP2 で利用できるメニューの一覧です。パブリッククラウド「Microsoft Azure」との違いもわかるようにしてみました。
カテゴリー | メニュー名 | Microsoft Azure |
---|---|---|
ADMINISTRATION | Region Management | × |
Resource Providers | × | |
Offers | × | |
Plans | × | |
Tenant Subscriptions | × | |
Updates | × | |
Provider Settings | × | |
Locations | × | |
GENERAL | Resource groups | 〇 |
All resources | 〇 | |
Tags | 〇 | |
Recent | 〇 | |
Subscriptions | 〇 | |
Marketplace | 〇 | |
Resource Explorer | 〇 | |
Portal settings | 〇 | |
COMPUTE | Virtual machines | 〇 |
Availability sets | 〇 | |
DATA+STORAGE | Storage accounts | 〇 |
NETWORKING | Virtual networks | 〇 |
Network security groupss | 〇 | |
Load balancers | 〇 | |
Network interfaces | 〇 | |
Public IP addresses | 〇 | |
Connections | 〇 | |
Virtual network gateways | 〇 | |
Local network gateways | 〇 | |
Route tables | 〇 | |
MANAGEMENT&SECURITY | Audit Logs | ✕ |
このように、Azure Stackには、Microsoft Azureにはない「ADMINISTRATION」のメニューが複数あることがわかります。これはAzure Stack TP2を使用するサービスプロバイダーや社内の管理者向けのカテゴリーとなっていて、特に重要なメニューである「Offers」「Plans」「Tenant Subscriptions」については、Microsoft Azureサイトの「Key features and concepts in Azure Stack」にて以下のような体系図で表現されています。
上図をすぐに理解するのは難しいでしょう。とは言え、Azure Stackにおける「Plan」「Offer」「Subscription」などの関係性を理解してしまえば納得できるようになるので、まずは管理者側の手順と、利用者側の手順をシーケンスとして整理してみるところから始めます。
Azure Stack TP2を利用するまでの流れ |
分けてみると比較的簡単です。サービスを提供する側の人(サービスプロバイダーや企業の管理者)は利用者にサービスを届けるための設定を、利用者はサービスを使うための準備作業(サブスクリプションの取得)を行うことになります。もう少し具体的に記載するとこのようになります。
■サービスプロバイダーや企業の管理者の作業
- まず、Azure Stack TP2を利用者に提供するためにPlanを作成します。Planを作る際には、利用者が使用できるサービスとそのクォータ(容量制限など)を定義することができます。
- Planを作成した後はOfferを作成します。Offerとは、作ったプランをユーザーに届けるための設定で、誰でも使えるものは「Public」、特定の人にだけ使ってほしいものは「Private」を設定します。また、Offerは1つもしくは複数のPlanにより構成するようになっています。
■利用者側の作業
- Azure Stackのサービスを使うためにはSubscriptionを取得します。利用者は、Subscriptionを取得する際に、利用可能なOfferを選択することになります。
- Subscriptionを取得すると、元のPlanに登録されているサービスを利用することができます。
さて、サービス一覧に話を戻しましょう。ADMINISTRATION以外にも「CONPUTE」「DATA+STORAGE」「NETWORKING」「MANAGEMENT+SECURITY」というメニューがあります。Microsoft Azureでは「WEB+MOBILE」や「DATABASES」、「INTELLIGENCE+ANALYTICS」など、PaaSやSaaSのカテゴリーがたくさんありますが、Azure Stack TP2のデフォルト設定ではIaaSのメニューのみとなっていることがわかります。
Azure Stack TP2でも「App Service」や「SQL database/MySQL Servers」などのPaaSを作ることはできますが、Azureの強みであるPaaSやSaaSの数々もAzure Stackで使えるようになることを期待したいところです。
* * *
以上、今回は、Azure Stack TP2のサービスメニューについて紹介しました。次回はAzure Stack TP2で実際に仮想ネットワークやストレージアカウント、仮想マシンを作成しながら、利用者視点で見たAzure Stack TP2がMicrosoft Azureとどのように異なるのかを解説します。
著者紹介
株式会社NTTデータデータセンタ&クラウドサービス事業部
岡本 迅人、奥村 康晃
NTTデータで提供するiDCサービスの保守運用に携わる。また、プライベートクラウドやパブリッククラウド、ハイブリッドクラウドの構築支援を行っており幅広い技術領域に携わっている。最近では、Azure Stackの情報収集を目的にMAS研(Microsoft Azure Stack 研究会)に参加している。