日産自動車が、全社規模で米Workdayのクラウド型人事ソリューション「Workday ヒューマン キャピタル マネジメント(Workday HCM)」を導入すると発表したのは2016年5月のことだ。導入プロジェクトは各国で順次展開され、2017年上期には、世界の全拠点で稼働開始できる見込みだという。

世界レベルでの人材育成や適材適所の人員配置を実現するために、大規模な人事システム刷新に踏み切った日産。全拠点での稼働開始に至るまでの道のりや、期待する効果などについて、日産自動車 Global Digital HR Division General Manager ラジュ・ヴィジェイ氏と同社 グローバル情報システム本部 一般管理システム部 主担 住野琢磨氏にお話を伺った。

日産が抱えていた「人事の課題」

「我々の会社のなかで最も重要な財産は人材であり、その能力やスキルをどのように活用したらよいのか、またどのように育成することができるのかが課題です。我々は、そこに取り組んできました」とヴィジェイ氏は語る。

日産自動車 Global Digital HR Division General Manager ラジュ・ヴィジェイ氏

日産自動車 Global Digital HR Division General Manager ラジュ・ヴィジェイ氏

氏によれば、日産は地域ごとに集約された組織となっており、それぞれがどのようなプロセスやシステムを使うかを自律的に決定してきた。人事システムに関してはSAP、PeopleSoft、アトラスと3つの異なるシステムを利用していたため、グローバルな観点で統一した人事評価ができないことが課題となっていたのだという。

こうしたことから、日産では2013年から人事システムのグローバル化に向けた取り組みを開始。まずは、グローバルで人材評価・管理を行っていく上で共通化できる要素と、地域固有の要素を洗い出した。それらを踏まえて構築するシステムの青写真を描き、香港と南アフリカでテスト運用を開始したのだという。

システムの機能が十分に要件を満たすと確認されたことから、2014年に北米、2015年に日本、欧州、2016年にはアジア・オセアニアと順次展開し、2017年上期には世界の全拠点で稼働する見通しだ。

数あるクラウドベースの人事システムの中から、なぜ、日産はWorkday HCMを選んだのか。ヴィジェイ氏は「既存システムをアドオンすることなく、全てをオーガニックでクラウド化できるシステムを求めていたから」だと説明する。

また、Workdayのユーザーコミュニティ制度「ブレインストーム(Brainstorm)」の存在も大きい。Workdayではその製品コンセプトとして「Power of 1」を掲げており、全てのユーザーは、常に同じプラットフォーム、同じコードライン、同じバージョンを利用する。そして、毎年3月と9月に大型のアップデートが行われるが、そこではブレインストームから挙がった要望を元に投票を行い、選ばれたものが新機能として追加される仕組みだ。

「(Workday HCMならば)我々が独自に作り込む必要がなく、常にベストプラクティスを利用できることになります。他社の事例を日産でも活用できますし、逆に我々も貢献することが可能です。こうした『グローバルエコシステム』に参加できるのが、Workday HCMを利用するメリットだと考えています」(ヴィジェイ氏)