NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、米Virtustream、EMCジャパンは2月6日、国内クラウド市場拡大に向けた戦略的協業に合意したと発表した。これにより、3社は協働で大規模SAPシステムなどに対応する旧夕方クラウド基盤サービスの開発を行い、デルも交えて販売に取り組む。

サービス提供は2017年春に開始する予定。日本以外の国への展開については、検討中だとしている。

3社の「強み」を生かした新たなクラウドサービス

「NTT Comでは近年、『顧客の経営環境をITで改善する』という観点からサービスを提供するべきだと考え、デジタルトランスフォーメーションを提案してきました」と語るのは、NTT Com 取締役 クラウドサービス部長の森林 正影氏だ。

NTT Com 取締役 クラウドサービス部長 森林 正影氏

その実現に向け、同社ではかねてより、共有型サーバと専有型サーバをハイブリッドで利用可能な「Enterprise Cloud」を提供している。「(我々のように)クラウド基盤からデータセンター、ネットワークに至るまで全てをカバーするプレイヤーは、ほかにはないと認識しています。しかし……」と森本氏は語る。

「全部を自社で完結しようとはなりません。一番良いものを出そうとすると、それぞれの強みを持ったパートナーと組むのが最善です。だからこそ、パートナーと組んだサービスの提供に力を入れています」(森林氏)

NTT Comが提供するクラウド基盤は、大別するとIoTやビッグデータなどクラウドネイティブなICTを支えるものと、ERPをはじめとする基幹システム、業務システムなどを支えるトラディショナルなICTを支えるものの2つに分けられる。

このうち、今回の協業で強化されるのは、トラディショナルICTを支えるクラウド基盤だ。具体的には、Enterprise CloudにVirtustreamの共有型クラウド技術、Dell EMCのストレージ技術・コンバージドインフラ技術を組み合わせた「共有型SAPシステム向けCloud」のサービスが追加されることになる。

Enterprise Cloudにおける新サービスの位置付け

Virtustream チーフオペレーティングオフィサー(COO)のサイモン・ウォルシュ氏は、「パブリッククラウドのサービスを提供するには、インフラや、ネットワークの耐久性に投資しているNTT Comの環境が最適だと判断した」と説明する。

Virtustream COO サイモン・ウォルシュ氏

新サービスの大きな特徴の1つは、Virtustreamの特許技術「μVM」により、CPU・メモリなどの実利用量で課金する従量課金制が可能になったことだ。今回のサービス提供は共同投資による展開であり、同技術はNTT Comにライセンス共有されるかたちになる。

より細かな単位での従量課金で、ユーザーにはどの程度のメリットがあるのか。ウォルシュ氏は、「これまでの経験上、プライベートクラウドからVirtustreamのサービスに移行すると30%ほどコストが削減できているというデータがあります」と説明する。

そのほか、国内のプライマリデータセンター(関東)とセカンダリーデータセンター(関西)でDR(Disaster Recovery)環境を提供し、SLAは最大99.999%、コンプライアンスにも対応するという。

森林氏は、「NTT Comの既存顧客やEMCジャパンの顧客など、既に見込み客はたくさんいる」と自信を見せ、「我々のインフラ設備やクラウド基盤、Virtustreamの共有型クラウド技術、デルのストレージ技術やコンバージドインフラなどを使って、競争力のあるサービスを出していきたい」と意気込みを語った。