ヤマハは1月16日、主に小中学校を対象に、ICTを活用した音楽教育ソリューション「Smart Education System」の提供を開始すると発表した。その第1弾として、Windows PC・タブレット端末用の授業モデルパック月デジタル音楽教材「ボーカロイド 教育版」の提供を2月7日より、「ギター授業」「箏(こと)授業」の提供を3月上旬より開始する。
価格設定など、各製品の詳細についてはこちらの記事をご覧いただくとして、ここではボーカロイド 教育版を中心に、記者発表会で説明された製品開発の背景や会場で実施されたデモの模様をレポートする。
ボーカロイドを活用したデジタル教材
「過去、ボーカロイドの開発と事業展開をしてきましたが、教育という予想していなかった分野で活用され、これまでとは別のかたちで社会に貢献できるのは担当者として幸せなことだと感じています」
冒頭、そう切り出したのはヤマハ 研究開発統括部 新規事業開発部 部長の剣持秀紀氏だ。
ヤマハ 研究開発統括部 新規事業開発部 部長の剣持秀紀氏 |
「ボーカロイド(VOCALOID)」とは、ヤマハが開発した音声合成技術であり、それを活用した製品の総称でもある。歌詞と旋律を入力することで、あらかじめサンプリングされた人間の声をベースにした歌声を合成することができる。
この技術を利用して開発されたのが、今回発表されたボーカロイド 教育版だ。ICT化が叫ばれる教育現場では、電子黒板やタブレット端末の採用をはじめ、ハードウェア環境が整備されつつある。これに続くステップとしては、デジタル教材や指導方法などのコンテンツに対するニーズの拡大が考えられる。
こうした状況を踏まえ、ヤマハでは同社のノウハウを生かしたICT音楽教育ソリューションの構築に2014年から取り組んできたのだという。
小中学校の音楽の学習指導要領には、「歌唱・器楽」「鑑賞」「創作」の3点が盛り込まれているが、これらのうち「創作」のサポートに焦点を当てたのがボーカロイド 教育版だ。
同ソフトウェアでは、タブレット端末上で歌詞を入力した後、任意の音階をタップすることで、歌詞と音を紐付けて曲を作成することができる。作成した曲はすぐに再生できるため、再生・修正を繰り返すことで自分のイメージに近づけていけるというわけだ。
付属する音源で伴奏も付けられるようになっており、和音の構成音をガイドで表示してハーモニーを確認しながら作曲するといったことも可能となっている。
15校の小中学校で行った実証授業では、直感的な操作で作曲・試行錯誤できる点や、最後に曲という成果物が残る点などが評価されたという。
既に教育現場からは、ボーカロイド 教育版で作成した楽曲を使ったコンテストの開催を希望する声なども上がっており、ヤマハ 新規事業開発部 SES事業推進グループ 主事の玉井洋行氏は「ソフトの普及がある程度進めば、プロモーションの一環として実施することも考えています」と意欲を見せた。