マイナビニュースは12月7日、「マイナビニュースフォーラム2016 Winter for データ活用 ~IoT時代の機先を制す~」と題したイベントを開催した。「IoTの先にあるAI労働力(RPA/Digital Labor)時代 - 欧米の先進事例に学ぶ今後のビジネスのあり方」と題して行われた基調講演には、KPMGコンサルティング パートナー SSOA CoE統括 田中淳一氏が登壇。技術の発達に伴うホワイトカラー業務の変化と、欧米の先進事例に学ぶ今後のビジネスのあり方について解説が繰り広げられた。本稿では、その模様をレポートする。
新たな概念の労働者「デジタルレイバー」の出現
田中氏は、外資および国内のコンサルティング会社でパートナーを歴任後、現在はKPMGコンサルティングでSSOA BU統括パートナーを務める人物だ。AI(人工知能)/RPA(Robotic Process Automation)の検討・導入や、新規事業戦略などを専門としている。
基調講演では、そんな田中氏により、RPAの概要から具体的な活用事例、今後の業務にもたらされるインパクトに至るまでが次々に語られた。
KPMGコンサルティング パートナー SSOA CoE統括 田中淳一氏 |
まず田中氏は、オックスフォード大学のオズボーン准教授による論文「THE FUTURE OF EMPLOYMENT」や、米McKinsey&Companyの調査部門McKinsey Global Instituteが発表したレポートを基に、今後10~20年程度で47%の雇用が自動化・機械化される可能性が高く、2025年までに全世界で1億人以上の知的労働者、もしくは1/3の仕事がRPAによって置き換わるという予測を紹介。既に国内においては、経済産業省が次期通常国会からRPAの本格導入を目指していることが報道されている。
RPAには「定型事務作業を自動化すること」と、「AIなどによって高度な知的処理を自動化すること」の2種類があり、前者については既にビジネスにおける効果も実証されているという。
「Excelでマクロを組み、作業の効率化を図る」といった自動化はこれまでにもあったが、それが難しい基幹システムの自動化などもRPAであれば可能だという。対象となり得る業務は請求書処理や経費精算などの経理財務業務のほか、給与・福利厚生、申込み処理、営業事務など多岐にわたる。
業務を素早く、正確に行えるのがRPAのメリットだ。例えば、とある金融機関ではシェアードサービスにRPAを導入することで、控えめに見積もっても30億円以上のコスト削減が実現されたという。
「RPAは一般的にイメージされるようなロボットではなく、既存の技術を組み合わせたバーチャルなもの」だと田中氏は説明する。だとすれば、RPAはサポートツールではなく、作業者そのものだと言えるだろう。
いわば、企業という組織の中に、新たな概念の労働者「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」が出現したようなものなのだ。
こうしたRPAの市場規模は急速に拡大しており、2020年には5,000億円、2024年には1.7兆円市場に成長する見込みとなっている。
講演では、田中氏が実際にRPAを用いて100件の交通費精算データを処理するデモンストレーションを披露。1件あたり人手なら2分かかる作業を、RPAが1秒で処理する様子が実演され、来場者に大きなインパクトを与えていた。