ソフトバンク・テクノロジー(SBT)は11月24日、「仙台開発センター」の開設を発表した。同社はソフトバンクグループのシステム開発などを行っているが、その体制強化を目的に、仙台をニアショア開発拠点として据える。

また29日には、宮城県石巻市のソフトウェア開発会社「イメージア・ソリューション」との業務提携を発表。ニアショア開発拠点は同社の仙台オフィスに構えるもので、地場の開発会社との連携によって案件創出やIT人材の確保を目指す。

なぜ仙台なのか

記者説明会で同社 代表取締役社長でCEOの阿多 親市氏は、自身が社長に就任した2012年以降、「セキュリティ」と「ビッグデータ」「クラウド」関連の技術者採用と能力開発を続けてきたと語り、現在のトレンドに先んじて投資を続けてきたことをアピールした。

(左から)ソフトバンク・テクノロジー 代表取締役社長 CEO 阿多 親市氏、仙台市長 奥山 恵美子氏、イメージア・ソリューション 代表取締役 會田 直弘氏

また、この三要素を必要とするバズワードの「IoT」が、ブレイクする目前に来るとしながらも「まだビジネスとして成立していない」(阿多氏)と指摘。フォントベンダーのFONTWORKSや電子認証のCyberTrust、Linux OSのMiracle Linuxといった子会社を引き合いに出し「小型デバイスが普及する時代に必要な要素をさまざまな会社と連携してやっていく、その1つがイメージアとの提携だ」として、業務提携の理由を話した。

一方でイメージア・ソリューション 代表取締役の會田 直弘氏は、ニアショア開発拠点としての立ち回りを成長戦略として位置付け、「東北エリアにおけるベンチャー企業と大企業連携の1つとして、(ITの)空白エリアを埋めるべく、開発だけでなく運用サポート含めて発展を狙っていきたい」と語る。同社は仙台オフィスの提供だけでなく、SBTが東京・新橋に構える「汐留開発センター」に東京オフィスを12月1日より開設しており、単なるインフラ提供やSBTの東北地域の足がかりとなるだけでなく、自身が東京へ進出する機会も得た。

「ソフトバンク・テクノロジーはマイクロソフトのワールドワイドパートナーアワードで表彰されるなど、エンタープライズクラウドの実績が世界レベルだと聞いている。そうした技術力を学ぶことで、東北に還元し、自社ソリューションの立ち上げにも注力していきたい。特に地場ベンチャーとして、地域課題の解決にIoTは重要になるので、伸ばしていきたいと思う」(會田氏)

SBTは福岡や旭川にも開発センターを構えており、福岡は100名規模、旭川は20名規模(子会社従業員)を雇用している。すでに開発拠点を複数用意しながらも仙台に進出する理由については、「立地」「学術都市」「IT関連企業の集積」が挙げられる。特に立地面では、新幹線で東京駅から1時間半で到着するため、「始発から終電の時間で考えれば、東京の人員が最長で10時間は滞在できる」(SBT 執行役員 玉井 充氏)という日帰り出張できるメリットがある。東北中から集まる学術都市の若いIT人材を雇用できれば、その育成を地場でできるという算段だ。

特にSBTが力を入れるのはセキュリティ人材の育成。経産省が6月に発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、現時点でIT技術者が17万人不足しており、IT市場が高度成長を続ければ、2020年には37万人の不足になる可能性があるという。その中でも最も深刻な人手不足に陥ると見られているのがセキュリティ人材であり、現時点での不足数がIT全体の3/4に相当する約13万人、2020年には20万人弱にまで拡大する。

一方で企業のセキュリティ対策は、昨今のサイバー攻撃の拡大によって喫緊の命題とされており、満足に雇用できていない企業も多いとされている。

「かつてはファイアウォールのログを精査するだけで侵入経路を判別していたが、攻撃の激化に合わせて、ゲートウェイからエンドポイントまで、さまざまなログを相関分析して攻撃の特徴を捉え、分析する必要が出てきた。その分析を行うSIEM(Security Information and Event Management)の製品スペシャリストを社内で育成しており、ベンダーによる認定者数が世界一となっている。セキュリティ人材の育成とマネージドセキュリティサービスの運用によって、企業や官公庁のセキュリティ攻撃に対する体制の強化を支援していきたい」(SBT CSO 佐藤 光浩氏)

SBTは宮城県と岩手県、新潟県の自治体情報セキュリティクラウドの構築・運用を受注しており、その構築部分は仙台開発センターで対処する。なお、ネットワーク管理・運営や、いわゆるSOC(Security Oparation Center)の業務は東京で行うとしている。