前回、Dellの「PowerEdge R630」を使用してAzure Stack TP2のインストールの条件や流れ、実際に利用したハードウェア構成などを紹介しました。ログオン後に「Microsoft Azure」と同じ画面が表示されるところまでの流れは、TP1同様、基本的には「コマンドを実行して待っていればよい」というシンプルなものでした。
ただし、全てがスムーズにいってくれればよいのですが、実際の作業に障害はつきものです。筆者も検証を繰り返すなかで、何度かうまくいかない状況に遭遇しました。そこで、今回は、実機を使って検証を始めようと思っている方、インストールを試してみたけれど上手くインストールができない方向けに、インストール時の注意事項や不具合時の対処法などを、実際に試してみた経験を基に説明します。
それでは、早速解説を始めましょう。
インストール作業のリトライについて
Azure Stack TP2では、インストール中に不具合が発生してしまった場合に使えるリトライの仕組みが用意されています。このリトライには、次の2種類の方法があります。
●リデプロイ(Redeploy):Azure Stack TP2 のブートファイルの作成からやり直す
●リラン(Rerun):インストールの途中のステップからやり直す
Azure Stack TP2のインストールは、前工程でデプロイしたリソースを基に次の工程のインストールに進むのですが、前工程の完了のチェックが十分ではなさそうです。実際には「前工程で作成した仮想マシンの起動が完了していなかったため、インストールに失敗する」というケースもあります。
インストールがうまく行かなかった場合、まずはリランを試してみて、何度も(筆者の経験だと4回以上)同じ個所で失敗するようでしたら、リデプロイを検討するのが良いかと思います。インストールスクリプトの細かいパラメータチューニングは、GAに向けて期待したいところです。
インストール時の注意点
Azure Stack TP2のインストール時、筆者もさまざまなトラブルに直面しました。その経験を踏まえたインストール時の注意点として、以下のようなものが挙げられます。
●Azure Stack TP2はAzure ADに接続するため、インターネット環境が必要になります。インターネット環境に接続していないとAzure ADに接続できないため、インストールを開始することができません。
●インストールが失敗した状態で、ホストをうかつに再起動してはいけません。仮想マシンが全て削除され、その後リランしてもインストールが正常に完了しませんでした。その場合は、リデプロイから実行することをお勧めします。
●Azure ADのユーザーをインストールのリラン中に変更してはいけません。何度かAzure Stack TP2のインストールを試しているうちに、Azure ADのユーザーの権限が足りないのかと思い、Azure ADのユーザーを途中で変更しましたが、筆者の環境ではうまくデプロイできませんでした。この場合も、リデプロイすることをお勧めします。
インストール失敗時の解析
Azure Stack TP2のインストールが失敗する原因にはさまざまなものが考えられますが、簡単な解析が可能です。エラーログは「C:\CloudDeployment\Logs\」に「summary.YYYY-MM-DD.tt.N.log.xml」という名前で存在します。
Azure Stack TP2のトラブルシュートについてはMicrosoft Azureのサイトにある「Microsoft Azure Stack troubleshooting」のページが参考になりますので、インストール時にエラーが発生した場合は、こちらをまず確認することをお勧めします。
以下に、筆者の環境で発生した具体的なエラーについていくつか紹介します。
0.20
このエラーは、「BGP-NAT」に関するエラーです。これが発生した場合、Hyper-Vマネージャで「BGP-NATという名前の仮想マシンが存在しているか」「電源は起動しているか」「IPアドレスは付与されているか」を確認してください。それらに問題がない場合は、仮想マシンを再起動するのが有効です。
60.61.93
このエラーは「Create-ActiveDirectoryApplication」の関数で発生しているエラーです。エラーメッセージからAzure ADの権限を疑いましたが、特に問題なさそうだったので、3回リランしたら成功しました(「リランするだけで成功することがある」というのが重要です)。
エラーが発生した場合のエラーログの読み方が少しわかりにくいので、補足しておきます。エラーログは上述したとおり「summary.YYYY-MM-DD.tt.N.log.xml」です。 インストールに失敗した場合はStatusが「Error」になるので、エラー個所のIndexを検索します。
上記は「60.61.93」でエラーが発生した際のエラーログになります。なお、インストールに失敗しても下記のコマンドを使用して、該当個所からリランすることが可能です。
Invoke-EceAction -RolePath Cloud -ActionType Deployment -Start 60.61.93 -Verbose
インストールのリランは、該当個所からではなく初めから実行することもできます。これは、「.\InstallAzureStackPOC.ps1」コマンドに「Rerun」のオプションを付与することで実行可能です。
ただし、Rerunオプションで実行した場合、Azure ADのクレデンシャルは初期実行時に実行された値が設定されるようでしたので、初期実行時に渡した値を変更したい場合は、リデプロイが必要になります。
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以上、今回は、Azure Stack TP2のインストール時の注意点や失敗した際の対処方法について解説しました。次回は、Azure Stack TP2の基本的な構成や機能について紹介します。
データセンタ&クラウドサービス事業部
岡本 迅人、奥村 康晃
NTTデータで提供するiDCサービスの保守運用に携わる。また、プライベートクラウドやパブリッククラウド、ハイブリッドクラウドの構築支援を行っており幅広い技術領域に携わっている。最近では、Azure Stackの情報収集を目的にMAS研(Microsoft Azure Stack 研究会)に参加している。