11月8日、ClouderaはHadoop誕生10周年を記念し、IoT・ビッグデータのビジネス活用に関するイベント「Cloudera World Tokyo 2016」を東京都内にて開催した。

同イベントで行われた特別対談では、「データとテクノロジーの進化が医療とヘルスケア、そして医療の世界をどう変革するのか」をテーマに、熱いトークが繰り広げられた。

登壇したのは、Web上のサイト情報をキャッシュとして保存する無料サービス「ウェブ魚拓」の開発者で、IT業界屈指の肉体派エンジニア、新沼大樹氏、そしてビッグデータ基盤「Apache Hadoop」の生みの親であり、現在はClouderaのチーフアーキテクトを務めるダグ・カッティング氏だ。

本稿では、「データ×テクノロジーでトレーニングはどう変わる? 日本の握力王を迎え、日米の健康志向のエンジニアが2020年代のフィットネスを予測する」と題して行われた対談の模様をお伝えしよう。

データは何のためのもの?

新沼氏は、知る人ぞ知る大のトレーニング好きであり、筋トレ、とりわけ握力トレーニングの第一人者としても知られている。非公式記録ながら、握力グリッパー(CoCグリッパー)の最上位モデル#4(166kg)を閉じた実力の持ち主だ。

新沼大樹氏

「ウェブ魚拓」の開発者で、IT業界屈指の肉体派エンジニア、新沼大樹氏

実家の食事が多すぎて太ってしまい、痩せようとしたことをきっかけにトレーニングを始め、以来20年間続けているという。

一方、カッティング氏は、18年にわたって自転車を愛するサイクリニストだ。米国カリフォルニアに在住し、週に3日は自転車で出かけるという。「毎年、少なくとも1回は100マイル(約160km)を走ります」(カッティング氏)というから驚きだ。

ダグ・カッティング氏

ビッグデータ基盤「Apache Hadoop」の生みの親で、現在はClouderaのチーフアーキテクトを務めるダグ・カッティング氏

「体を動かすのが大好き」という共通点を持つ2人だが、そこにはどのようにデータ活用が関係してくるのだろうか。

両氏が口を揃えて強調するのは、「健康管理のためには目標管理が重要」だということ。新沼氏は毎日必ず時間を作って「ジムに行くこと」を目標にしているが、それは「(ウエイトトレーニングの)重さを目標にすると、それに縛られてしまってモチベーションの点ではむしろ遠回り」だから。あえて簡単にも思える「ジムに行くこと」を目標にすることで、自身のモチベーションをうまく管理しているわけだ。

一方のカッティング氏の目標は「週に数時間は外に出ること」。「GPSデバイスを使ってパフォーマンスをトラッキングし、常に改善する方法はないか考えながら走っている」(カッティング氏)という。例えば、「もっと速く山を登るにはどうすればよいか」といったことを考えているそうだ。

自らをトラッキングするなど、スポーツにデータ活用を取り入れているカッティング氏にとって、データとは「自分がどこまでできたのか」を確認するためのものであり、さらに重要なのは「ほかの人がどんなデータを取得しているかがわかること」だと説明する。

トレーニングにおいては、食事のデータも重要だ。新沼氏にとって最も面倒なのは食事で、外食しなければならないとき、例えば加工肉しかなかったらカロリーのうち脂肪はどれくらいだろうと考えて「絶望的な気分になる」(新沼氏)のだという。その理由はやはり筋肉だ。

新沼大樹氏

「質の良いタンパク質を取っているだけの人と、運動をしているだけの人とでは、タンパク質だけ取って運動していない人のほうがまだ筋肉がつく可能性が高いんですよ」と新沼氏は熱を込めて語る。

このように、日頃からデータを積極的に活用する新沼氏とカッティング氏は、揃って「トレーニングにデータは間違いなく役立つ」と断言する。

とは言え、データ活用については日米ともにまだ改善の余地があるようだ。

「データは、パフォーマンスを改善するために何が必要なのかをより深く理解するためのものです。これは、対象が運動でもビジネスでも同じことが言えます。そして、日本も米国もビッグデータ導入に関してはまだ初期段階にあると見ています」(カッティング氏)

では、このデータ活用を効率的に改善していく方法はあるのだろうか。

「データ活用環境は、常に進化しています。もっとデータを集めれば、データの理解や解釈が深まります。そうやってデータとコミュニケーション(対話)することが大切なのです」(カッティング氏)