競争が激化するビジネスチャットツール。LINEの兄弟会社「WorkMobile」がこの春に参入し、ビジネス向けながら中高一貫校への導入なども行われているTalknote、エンジニアを中心に利用が拡大する米Slackなど、多様なプレイヤーがしのぎを削る。そのうちの1つ、キングソフト「WowTalk」のDepartment Assistant Directorを務める伍 陸(う りく)氏に、WowTalkの強みや、製品の将来像について話を聞いた。
――ビジネスチャットというジャンルが盛り上がっているように思います
伍氏 : 昨年から今年にかけて、かなりプレイヤーが増えたように思います。細かいセグメントの定義を外せば、50製品ほど存在するはずです。2013年頃に私たちもモバイルシフトを進め、参入からおよそ3年弱がたちましたが、そうした市場環境もプレイヤーが増えた要因だと思います。
ユーザー企業側がビジネスチャットの製品を選択する際、無料プランの有無でおおよその方向性を決める印象があります。ただ、この領域で多いのが「ビジネスSNS」と「ビジネスチャット」が一緒くたにされていること。WowTalkはいわゆるショートコミュニケーションに近いチャットです。社内SNSは掲示版に近いものです。ユーザー企業が何を求めるかは、そうしたUIの違いに何を求めるかにもよると思います。
――WowTalkの強みはどこにあるのでしょう?
伍氏 : キングソフトはこれまでもオフィス互換ソフトやセキュリティソフトを提供しており、モバイルシフト後は名刺管理アプリなど、法人向け製品を数多く出してきました。「インターネットを便利にする」をミッションに掲げる中で、「キングソフトの世界観」を大事にして作っています。
ビジネスチャットというものは「ユーザー向け」と「管理者向け」の2つの概念をバランス良く考える必要があります。どちらもユーザー体験が改善されたという「実感」をしてもらうために製品開発を進めているんです。
ユーザー向けでは、8月のアップデートでタスク管理機能、ToDo管理機能を用意しました。これまで、タスク機能は別の機能として用意されていましたが、WowTalkではタスクも「コミュニケーションの一つ」として設定したんです。タスクの説明やステータス、ファイルの変更があると、グループ内にいる社員に通知され「巻き込める」んです。ビジネスチャットは、2者間コミュニケーションではなく、担当者全体を巻き込めることが重要。メールのCCでも実現できることですが、ユーザーの手間なく都度でお知らせするところが大きいですね。
管理者向けには「世界一細かいところをこだわっている」という自信があります(笑)。ファイル送受信やスタンプ送信は自由にしていいという企業があれば、セキュリティを気にしてローカルにデータ残したくない、スタンプはNGという企業もある。法人市場では細かい定義を求められているんです。
便利に使えること自体が足かせになってはダメで、「WowTalkの導入で会社がより良くなった」と情報システム部門の担当者が「実感」できるように努力しています。
――ビジネスチャットでは、ここのところ外部企業とのやり取りを可能にするツールも増えています
伍氏 : あくまで現状は、外部は呼び込めないようにしています。もしそういったことがしたいのであれば、WowTalkの運用で工夫していただくか、Slackなどの他のツールを利用してもらえればいいというスタンスですね。
私たちが提供したいのは「安心感」で、外部とやり取りできてしまえば情報漏えいのリスクなどが顕在化する。管理者側からすれば、内向きに閉じていた方が良いですよね。同様に、社内であっても部署間のみのコミュニケーションツールとして利用したいニーズもあるので、「パーティション機能」も用意しています。「関西地区だけ」「関東地区だけ」といった使われ方がありますね。