日本マイクロソフトが11月1日、2日に開催した開発者向けイベントの「Microsoft Tech Summit」。基調講演で日本マイクロソフト 執行役員最高技術責任者(CTO)の榊原彰氏は、マイクロソフトが「AIの民主化を目指す」と語り、4つのキーワードで同社が民主化運動をどのように進めていくのか説明した。
AIはさまざまな領域に適用されていく世界へ
榊原氏が挙げたキーワードは、「エージェント」と「アプリ」「サービス」「インフラストラクチャ」の4つ。
エージェントは、Windows 10に搭載されている「Cortana(コルタナ)」を指す。すでに1億3300万人が利用し、120億回に及ぶ会話が発生。「仕事・予定の内容を把握し、利用者が何を求めているのかコンテクスト(文脈)を理解するようになりつつある。みんなの予定を、誰よりも知っている」(榊原氏)。
続くアプリは、ビジネス活動の中核に位置するOffice 365やDynamics CRMにおけるAIの活用だ。これらの製品でもAIの応用が行われており「利用者が何をしようとしているのか先回りする」(榊原氏)ことで、ビジネスの効率化を進める。
「ビジネスのフィットネストラッカーとも言うべきもので、どのアプリケーションでどのような時間の使い方をしているのか、誰とコラボしているのかをOfficeが理解する。MicrosoftGraphを通じて情報の蓄積・分析を行うことで、やらなくてはならない仕事に従業員が集中できる。
例えばCRM。多くの企業が導入しているが、今まではビジネス上の顧客情報を蓄えてリレーションを管理し、見込み客しか見ることができなかった。しかし、顧客企業は社会の中で、ビジネスの外にもネットワークがある。FacebookやTwitterの情報がCRM上に紐付けられるようになり、豊富な情報をもとに多くのビジネス機会を提供できるようにする」(榊原氏)。
サービス分野で言えば、最近伸長しているのがCustomer SupportにおけるAI活用だ。「強化学習(Reinforcement Learning)を用いて、さまざまな情報を把握し、次にどういったアクションを行うべきかを決定する。このテクノロジーがCS業務のサポートを行う」(榊原氏)。
実際に三井住友銀行が自動応答システムの開発に着手しており、ベテラン行員が応対していた業務を自動化する。利用者が曖昧な質問した場合でも、繰り返し質問することで利用者が何を求めているのか導き出す。かつての自動応答は、定型文による人間らしさのないものだったが、自然言語処理技術などの向上によって、より自然な対応が可能になった。また、文章だけでなく図や表なども交えて説明することで、利用者の理解を深める。