SAS Institute Japanは11月1日、次世代IT技術の活用に取り組む人々を対象としたカンファレンス「SAS Analytics Next 2016」を都内にて開催した。「アナリティクス新世代」をテーマに掲げた同カンファレンスでは、「AIで解き放つIoTの未来」、「AI時代の金融ビジネス」、「新たなるIT部門の役割」の3トラックを用意。これからの企業ビジネスを考えたとき、AIやIoT、ビッグデータのもたらすインパクトや、IT部門のあるべき姿などについて、さまざまなセッションが繰り広げられた。
ここでは、「デジタルビジネス時代に期待されるIT部門の新たな価値」と題して行われたアイ・ティ・アール代表取締役 内山 悟志氏による講演の模様をレポートする。
IT部門を取り巻くデジタル化の潮流
デジタル産業革命が始まろうとする今、これまでのような大量生産・大量消費の市場経済は衰退の道をたどり始めている。内山氏は「グローバル化に向かっているのは、資本主義の延命に過ぎません。これからは、持続的再利用型経済がやってきます。何もかもゼロから作っては捨てることを繰り返すのではなく、モノを循環させたり再生したりして、価値を分かち合う時代になるでしょう」と説く。そうした流れのなかで、デジタル技術の活用は不可欠だ。
アイ・ティ・アール代表取締役 内山 悟志氏 |
従来のIT部門では、業務を改善したり、ビジネスを拡張したりするためにシステムを提供してきた。しかし、今起ころうとしているのは業務そのものを大きく変える、新たなビジネスモデルへの転換だ。ここで注目すべきデジタル化の流れは、大きく4つあるという。
1つ目は、「社会・産業のデジタル化」。バックオフィスや情報共有の仕組みではなく、ビジネスに直結する業種や事業に特化した部分、いわゆるビジネスITだ。例えば、製造業ならばモノづくり、小売業ならば店舗といった現場のデジタル化である。
2つ目は、「顧客との関係のデジタル化」である。オムニチャネル化が進む今、デジタルデバイスを使いこなす顧客にリーチする方法を模索しなければならない。このマーケティングITの領域には、注目している企業も多いだろう。
3つ目には「組織運営・働き方のデジタル化」が挙げられる。欧米では「Future of Work」などと表現されており、将来の働き方をITで切り拓く考え方だ。これには、ITを活用したワークスタイル改革などが相当する。
4つ目に挙げられるのは、「デジタル化に対応したビジネス創造」だ。インターネットやスマートフォンの利用を前提とした新しいビジネスは、既にそこかしこで生まれ始めている。
内山氏は、これらのうち1つ目と4つ目に着目し、企業ITとビジネスIT、そしてデジタルビジネスの関係性について次のように説明した。
「全社共通系と言われるような仕組み、ERPでカバーできるような領域が一般的な企業ITです。それに対して、ビジネスITは各業種に特化した業務分野を担います。そして、ビジネスITの部分集合に位置し、新業態まで作ってしまうのがデジタルビジネスです」
企業ITの領域ではクラウド化・コモディティ化が進み、IT部門が費やす時間的・金銭的コストは減少していくことが予想される。当然、このまま企業ITの領域に注力していては、予算も仕事も減っていくばかりだ。
「これからのIT部門はビジネスの分野に踏み出し、戦略部門と一緒にITを活用して収益を上げるところまでサポートしていかないと、価値が無くなる時代です」(内山氏)