アドビシステムズは10月17日、クラウドベースのドキュメント管理ソリューション「Adobe Document Cloud」の電子サインサービス「Adobe Sign」の最新版の提供を開始するとともに、提供体制を強化すると発表した。
説明会にはアドビシステムズ 代表取締役社長 佐分利ユージン氏や米Adobe Sysytems Adobe Document Cloud プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント ジョン・ペレラ氏らが登壇し、グローバルにおけるビジネス状況やAdobe Signの導入事例、国内におけるビジネス展開になどについて解説がなされた。
目指すべき紙からの脱却、プロセスの効率化
アドビシステムズでは、デジタルを活用し、優れた顧客体験を提供するための事業として「Creative Cloud」「Document Cloud」「Marketing Cloud」の3つの柱を設けている。これらのうち、Adobe Signは、AcrobatとともにDocument Cloudの中核に位置するサービスだ。
アドビシステムズ 代表取締役社長 佐分利ユージン氏 |
発表会に登壇した佐分利氏は、「Adobe Signは単なる署名ソリューションではなく、ユーザビリティを担保しながらコンプライアンスの向上や迅速な意志決定をサポートし、優れた顧客体験の提供を可能にします」と説明する。
今年4月、Adobe Signは「Adobe Document Cloud eSign」からの名称変更とともに全面的な機能強化を行い、サードパーティ製ストレージとの連携やモバイル対応などが発表された。それを踏まえ、今回はさらにプラットフォームを強化し、日本市場へ本格的に展開していくという。その狙いはどこにあるのか。
米Adobe SysytemsがIDCと共同で行った調査「The Document Disconnect 2015」によれば、ビジネスの意志決定の80%がいまだ紙のプロセスに依存しており、ビジネスリーダーの45%は、意志決定プロセスにおいて「ドキュメントの現在ステータスが不明」だと回答している。また、33%は承認されるまでに時間がかかりすぎていると感じていた。
米Adobe Sysytems Adobe Document Cloud プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント ジョン・ペレラ氏 |
「どうすれば、ドキュメントのワークフローを自動化できるのか。ここで活用されるのが、Adobe Signです」と語るのは、ペレラ氏だ。
「Adobe Signは世界各地で利用されていますが、我々の調査では日本でも大きなチャンスがあると考えています。例えば、紙の文書に印鑑を押して承認するような社内のワークフローは合理化できるはずです」(ペレラ氏)
先の調査でも、企業の経営層の53%が承認プロセスを自動化することが部門の生産性向上につながると考えており、43%はコンプライアンスのリスクを低減できると考えていることが明らかになっている。
氏は、プロセスを効率化することで業務効率を向上した事例として、英Jaguar Land Rover Automotiveを紹介。自動車メーカーである同社は、業務プロセスの多くが紙ベースで進められていたが、約1年半前にAdobe Signを導入し、80以上の評価・承認プロセスを自動化した。その結果、今ドキュメントがどのステータスにあるのかが明確にわかるようになり、従来は数週間かかっていた承認プロセスが数日で完了するようになったのだという。
「社員の『体験』を変えた、社内合理化の例だと言えます」(ペレラ氏)
こうした変革の可能性が、日本にも十分にあるというわけだ。