KDDIが法人向けに展開するWindows 10 Mobileデバイス「HP Elite x3」について、前回は「端末編」としてインタビューをお届けした。
これまで本連載でも取り上げてきたように、国内ではすでに複数のWindows 10 Mobileデバイスが展開されている。だがKDDIは、「単に端末を売るだけではない、キャリアにしかできない強みがある」と違いを強調する。
前回に続き、KDDI ソリューション事業本部 ソリューション事業企画副本部長 兼 クラウドサービス企画部長の藤井 彰人氏に話を聞いた。
法人のスマホ本格活用は「まだこれから」
「法人のスマホ本格活用は、まだまだ始まったばかり」と藤井氏。スマートフォンの法人導入率は60%で、コンシューマ市場と大差なくシェアは拡大している。しかし、活用の度合いに大きな差があり、「メールと電話くらいしか使っていないというケースが意外に多い」(藤井氏)という。
ガートナーの調査では、スマートフォンの法人端末ユーザーは、メールと音声通話利用率がそれぞれ70%、60%で半数以上が活用しているものの、グループウェアなどによる情報共有は40%強にとどまっているという。つまり、フィーチャーフォン時代と利用方法があまり変わらず、スマートフォンならではのメリットを活かしきれていないというわけだ。
そこでKDDIは、単にスマホを導入するだけでなく、「デバイス」「ネットワーク」「クラウド」の3点を包括的に見直すことを提案。デバイスの要がHP Elite x3で、「社内はデスクトップPC、外出先でノートPC、移動中はスマホ」といった使い分けしていた状況が「このデバイスであれば、3-in-1として1台に統合できる可能性を秘めている」(藤井氏)。
音声環境を含めてワンストップで構築できるのがKDDIの強み
法人のスマホ活用においては、音声環境も重要になる。これまでのオフィス環境は、構内PBX+固定ビジネスフォンであり、スマートフォンやクラウドといった新たなコミュニケーション基盤を導入してもそれぞれが分断されてしまい、統合が難しかった。
「オフィス環境をクラウド化していく際に、音声も統合するのがUC(ユニファイド・コミュニケーション)の考え方だ。Windows 10 MobileならSkype for Business(旧Lync)を用いることで音声環境を統合できる」(藤井氏)
KDDIは米Microsoft「Partner of the Year」のCommunicationsアワードを3年連続で受賞し、Skype for Businessの導入や運用実績がある。藤井氏は「上位レイヤーで完結するUCであれば一般のSIerでも提案できる。だがモバイル端末をVoIPで内線電話と連携するといった音声コミュニケーション全体でのUCが重要であり、我々の強みだ」と説明する。
一方でクラウドについても、同社は広域ネットワークサービス「Wide Area Virtual Switch 2(WVS2)」を提供している。外出先からOffice365などを利用する場合に、社内のイントラネットを経由する環境でも、WVS2ではネットワークの仮想化を利用して、トラフィックの最適な振り分けが可能になるという。
また、9月26日にはWVS2の機能拡張を発表。これまでKDDIのデータセンター「TELEHOUSE」やKDDIクラウドプラットフォームサービスに限定していたトラフィックフリー機能を、Amazon Web ServicesやAzureなどのクラウドサービスや、任意の事業所でのオンプレミス環境との接続にも拡大するなど、大幅な強化を図っている。(関連記事:AzureやAWSへのアクセスコストが4割減も - KDDIが広域イントラ「WVS2」を機能拡張)
「企業内ネットワークは複雑化しており、問題が起きると原因がどこにあるか分からないことも多い。だが、KDDIならデバイス、ネットワーク、クラウドをセットで提供しており、問題が起きてもワンストップで受け、切り分けて解決できる」(藤井氏)と強みを挙げた。