VR(Virtual Reality)の業務利用が普及の兆しを見せている。

日本電気(NEC)は「法人VRソリューション」の販売をアナウンス。導入企業向けにオリジナルのVR空間を構築したうえで、PCやHMD(Head Mounted Display)、モーションコントローラーなどのハードウェアをセットで提供するソリューションを開始する。価格は600万円程度~。

また、検討企業に対して、4つのコンテンツとハードウェア一式をセットで2週間提供する「VRお試しパック」も5万円~で提供開始。3DCADデータを取り込むオプションも10万円〜で用意している。

本稿では、同社が開催した体験会の内容を基に、VRの業務適用シーンについて紹介していこう。

法人VRソリューションで提供されるハードウェア

体験型と閲覧型、2種類のコンテンツ

最近では、業務でVRを利用する事例、あるいはメーカー側が想定する利用シーンが紹介されるケースが増えてきた。それらをまとめると、業務向けのVRコンテンツは大きく、VR空間内で自由に動ける体験型コンテンツと、施設内部の様子を画像などで確認するような閲覧型コンテンツの2つに分けられる。

体験型コンテンツは、CGをベースとしたもので、ユーザーが触れたり動かしたりできるほか、表示させる内容をその場で変更できる点も大きな特徴だ。一方の閲覧型コンテンツは、画像や動画で構成されるもので、ユーザーの動きに合わせて何かが変わるという処理はないが、没入感の高い世界で現実と同じものが詳細に確認できる点にメリットがある。

以下、順に見ていこう。

トレーニングでの活用

体験型コンテンツの典型的な利用シーンは、トレーニングだ。失敗が許されない作業、例えば、外科手術や航空機の操縦などが事例として取り上げられるケースが多い。

ミスが損失に直結する工場の生産ラインでの作業も適した活用例の1つ。NECのVRお試しパックにも、生産ラインの梱包作業を体験するコンテンツが含まれている。

このコンテンツでは、実際の作業スペースが再現されているだけでなく、手に取るべきものが視覚的に明示されるため、未経験者であっても、どこに何があり、どういった手順で作業を進めるべきかを一人で把握することができる。

工場の生産ラインのデモ。NECの無線LANルーターを梱包している。ディスプレイには操作者の視界が表示されている。道具、パーツが赤や緑で表示され、次にどれを手にすればよいのかが明示される。

実際に操作している様子。ディスプレイ横のセンサーで動きを感知している。このデモではOculus Riftを使用。ソフトウェアは、Unityを使って開発されている

左を向くと別の作業員も登場!! なお、施設やパーツのデータは3DCADを取り込むことも可能

非日常の体験

また、体験型コンテンツのもう1つの大きな用途が、日常では発生しづらいシチュエーションの経験だ。NECのデモで用意されていたのは、火災が発生した際の消火シナリオ。現実の世界で火災現場を用意するのは難しいため、VRだからこそ体験できるシナリオと言える。

「消火器の操作方法を教えてもらえるシーンといえば、消防署の方が開催してくれる消火訓練くらいでしょう。ただし、消火訓練で実際に消火器を持たせてもらえるのは1人か2人程度。ほとんどの方は未経験のはずです」(NEC担当者)

VRお試しパックには、森林伐採の体験シナリオも収録。木を切り倒すという危険な作業もVR上であれば安心して教えることができる。

森林伐採のデモ。傾斜や切り込みを入れる場所によっては、大木が手前に倒れてくる場合もある