生産性向上や効率化のために社員の働き方を変革する――そんな潮流が生まれてしばらくがたつが、果たして実現できた企業はどれほどあるだろうか。なかなか思うような変革を起こせない企業にとって、ロールモデルになるのが日本マイクロソフトの事例である。

同社 業務執行役員 Officeマーケティング本部 本部長・越川慎司氏が9月14日、リックテレコムが主催するワークスタイル変革DAYに登壇。事業生産性26%アップを達成した同社の取り組みについて語った。

「働いても結果が出ない」を変えるにはどうすればいいのか

「ITは働き方を変えられません」

講演冒頭、越川氏はそんなふうに述べて会場を驚かせた。

日本マイクロソフト 業務執行役員 Officeマーケティング本部 本部長・越川慎司氏

むろん、これはITが無駄だという意味ではない。越川氏は「ただし、働き方変革をしようというときに、ITが役立つこともあります」と続ける。

越川氏の真意は「制度を作るだけで終わってはならない」ということにある。働き方変革の目標はビジネスを生み出し利益を上げることであり、働き方変革はその手段にすぎないというわけだ。

一方で日本を取り巻く状況は厳しい。

生産年齢人口は減少の一途を辿っており、2030年時点には1300万人減になると推定されている。そんな状況でまず必要とされるのは働きたいけれど働けない人をサポートし、テレワークを推進していくこと。ただし、それでも労働人口の減少分を埋めることはできないと越川氏は言う。結局のところ、労働人口の減少をカバーするためには、一人あたりの生産性を向上させるしかないのだ。

ところが、先進国7ヶ国中、日本の労働生産性は19年連続で最下位という状況だ。労働時間が世界で2位と飛び抜けて長いにも関わらず、である。

「働いても結果が出ない」ということこそ日本の問題である、と越川氏は指摘する。

これを打破するためには「労働の量」ではなく「労働の質」を向上させるしかない。そのために必要なのが、経営に基づいた働き方の変革であり、これを全社員が実践することで効果を最大化することなのだ。

日本が直面している3つの課題

重要なのは経営者が旗振りをしてアナログ変革を起こすこと

日本マイクロソフトは5年前から、こうした働き方変革を経営戦略としてさまざまな取り組みを行ってきた。

そうした経験を踏まえ、越川氏は「アナログの変革こそ必要である」と断言する。

「経営者が旗振りをしないとうまくいきません。経営者を巻き込むことが働き方変革のポイントなのです」

ここで越川氏は、資生堂の働き方変革の取り組みを事例として紹介した。

資生堂は場所や時間、階層を超えた新しいコミュニケーションが働き方変革に必要と考え、ボーダーレスなコミュニケーションを実践。例えば現場の一般社員と役員がSkypeを使って直接対話する「ボーダーレストーク」などの試みだ。

資生堂のコミュニケーション改革

これにより現場のダイレクトな声がトップに伝わるだけでなく、上層部が現場をきちんと見てくれているという実感から社員のモチベーション維持にもつながったのだという。

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