少子高齢化の加速による労働力不足が深刻化する日本。そんな状況の中で企業が成長を遂げるためには「働き方改革」が必須といえる。では具体的に働き方をどのように変革していくべきなのか――。
9月14日、リックテレコムが主催するイベント「ワークスタイル変革DAY2016」がソラシティカンファレンスセンターにて開催され、多くの来場者で賑わった。
基調講演には早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問であり一橋大学名誉教授でもある野口 悠紀雄 氏が登壇。「ITの進展と働き方の改革」と題した講演を行った。本稿では基調講演の模様をレポートする。
IT化で変わりゆくワークスタイルと社会の仕組み
早稲田大学 ファイナンス総合研究所 顧問、一橋大学 名誉教授の野口 悠紀雄 氏 |
野口氏は講演の冒頭、現在の日本のワークスタイルがどのように変わりつつあるのかについて次のように紹介した。
「IT化で働き方が変わってきています。それを象徴するのがフリーランサーです。IT化により場所にとらわれず働くことが可能になり、同じ場所に集まる必要はなくなってきています。高度な専門家であるフリーランサーと企業を結びつけるようなアプリも、特に米国で登場しているのです」
IT化とフリーランサーの増加は、さまざまな業界や社会そのものにも変革を起こしていると野口氏。例えばタクシー配車サービスのUBERがそうだ。これまでタクシー会社に雇われて働いていた運転手が会社を辞めてUBERに登録し、フリーランサーの運転手として活躍する例が米国では登場しているという。また、他に仕事を持っている人が空いた時間にタクシー業を行うというケースもある。
ただし、こうした自由な働き方を実現するためには、社会の仕組みが変わる必要があると野口氏は言う。
「米国では、UBERはいわゆる白タクを合法化する動きをもたらしています。しかし、日本では既得権益があるため、白タクを自由化しようというところまではいっていません」
日本におけるもう一つの問題は、企業が社員に対してそうした副業を認めるのかという問題だ。多くの企業は副業を禁止しており、米国のようなペースでフリーランサーが増えることはなかった。
最近では副業を認める大企業も出てくるなど状況は変わりつつあるが、「ロート製薬は今年4月から副業解禁を決めました。ただ日本全体で見ると副業を認める企業は少数であり、変化はまだ始まったばかりです」という。
副業を認めた企業は何を期待しているのか。野口氏曰く、企業の狙いは「社員が他の企業や業界と接触することで、外部の知識や考え方を持ち込む」ことにあるのだとか。すなわち、従業員が多様性を持つことが自社のメリットになると考えているわけだ。
「働き方改革」は政府の方針でもあるが、とはいえ安倍内閣が取り組む「同一労働・同一賃金」には難しい面があると野口氏は述べる。
「無理に正規と非正規を一緒にすると、正規の賃金が減るか、非正規の雇用が減るだけです」
ではどうすべきか。
重要なのは「日本がどんな技術を活用できるか」だという。