第1回では、「HoloLensの魅力」について解説しました。第2回は「HoloLensの操作例と、アプリの開発環境」について説明します。
HoloLensアプリの例
HoloLens本体の電源を入れて、前回説明した「Bloom」のジェスチャーをすると、HoloLensのスタート画面が開きます。視線を移動させる「Gaze」によって、表示されているリング型のカーソルも移動し、視線の止まったところが選択された状態になります。例として「Holograms」を実行してみましょう。
HoloLensのスタート画面。ここでは、赤枠のHologramsを選択(赤枠は筆者が追加) |
視線を「Holograms」のメニューに合わせてAir Tapすると、用意されているさまざまな「Holograms」が表示される。例えば赤枠部分を選択すると… |
少年が画面から飛び出る |
さらに、Air Tapすることで、少年がダンスを踊りだします |
これはHoloLensのもっているメニューの、あくまで一例です。ストアでは「RoboRaid」などのゲームが無料で提供されており、臨場感あふれるゲームを楽しめます。
なお、ストアには無料のアプリがいろいろ用意されていますが、ダウンロードするにはWi-Fi接続が必要です。しかし、第1回で触れたようにWi-Fiを利用できないため検証できません。ご了承ください。
HoloLensアプリの開発環境
続いて、HoloLensで動作するアプリの開発環境について説明します。
原稿執筆時点(2016年9月)で必要なソフトウエアは以下の通りです。
執筆時点のHoloLens向けUnityのバージョンは「Unity HoloLens 5.4.0f3-HTP (64-bit)」となっています。普通のUnity5ではHoloLens用アプリが作成できませんので、注意してください。
この連載は、ある程度Unity5の操作を理解されている方が対象です。HoloLens用のアプリの作成方法については、動画も参考にしてください。
HoloLensではUWP(Universal Windows Platform)アプリであれば、その多くが動作可能です。UWPは、Windows 10 OSの統一アプリプラットフォームであり、PCでもスマートフォンでも「HoloLens」などの画面を持たないデバイスであっても、共通して動作します。
一方で、共通プラットフォームの性質上、「HoloLensならでは」の価値体験を提供することは難しいといえます。そこでUnityの出番となるわけです。
Unityは、ユニティ・テクノロジーズ社が提供するゲーム開発プラットフォームです。Unityの開発ツールは、3Dゲーム開発の手軽さと高精度な物理エンジンを搭載していることで有名ですが、開発環境や実行環境も含めたトータルの完成度の高さが一つの特徴とも言えるでしょう。
Unityを使ったHoloLensアプリ
下記のキャプチャは、Unityで作成したアプリのものです。
空中からハートを降らせていますが、最初は床をハートがすり抜けて落ちていきます。しかし、しばらくするとHoloLensが空間をスキャンして認識し、物体の上にハートが溜まるようになるのです。
HoloLensが部屋をスキャンして認識し、ハートが部屋に溜まりだす。動画はこちら |
背景の網目模様は部屋のスキャン結果を示しています。網目模様は「3Dモデルのメッシュ」と呼ばれるもので、このように空間をスキャンすることを「空間マッピング」と言います。
下記のアプリはUnityのキャラクター「ユニティちゃん」が部屋の中を駆け巡るものですが、こちらも空間マッピングによって部屋をスキャンし、障害物を乗り越えたり、その上に登ることが出来ます。キャラクターの操作は、Bluetooth対応キーボードの「上下左右矢印キー」で操作しています。障害物があると、その背後に回り込むこともできます。
キャラクターが部屋の中にある机の上に乗っている。動画はこちら |
筆者が作成している過程。「Scene」画面でキャラクターを配置 |
HoloLensで使用する場合は、背景を黒に指定する必要があります。背景の設定の方法については今後、解説していきます。
HoloLensのデバイスポータル
記事で使用しているHoloLensのスクリーンショットは、デバイスポータルから取得しています。デバイスポータルは、ブラウザ経由でHoloLensデバイスの状態を確認したり、HoloLensの体験者が見えている世界をキャプチャできるツールです。
USB接続でデバイスポータルに接続する場合、「http://127.0.0.1:10080」にアクセスすることで表示できます。ユーザー名とパスワードを入力する必要があるため、事前に設定が必要です。
このデバイスポータルの「Mixed Reality Capture」という機能で、体験者が目にしている風景を、録画、スクリーンショット撮影できます。録画データは「Live Preview」で再生できるほか、任意のフォルダーに保存もできます。
HoloLensの今後
米Microsoftは、「COMPUTEX TAIPEI 2016」の基調講演で「Windows Holographic」をOMEメーカーなどのパートナーに公開することを明らかにしました。
「Windows Holographic」は、現実世界に3Dホログラムを重ねて表示する技術を指します。これによって、HoloLensに準ずるデバイスがサードパーティから登場することになります。HoloLensは現在、3000ドルと一般的なPCより高価ですが、競合デバイスの開発が進めば、多機能かつより安価なMRデバイスを手に入れられるようになることでしょう。
次回以降は、より具体的に、HoloLensアプリを開発する上でのノウハウをお伝えします。第3回は「Air Tapによるオブジェクトの色の変化」について解説します。